/MAT/LAW25: 材料試験データから、材料パラメータを同定してみる

altair_fukuoka
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Altair Employee

はじめに

こちらの記事で、各材料パラメータにどのような役割があるのかを説明しました。

本記事では、先の記事で培ったことを生かしながら、材料試験データから /MAT/LAW25 の材料パラメータを決めていきたいと思います。

お題となる材料試験データ

お題となる試験データは次の図です。応力は MPa です。0度、90度、45度というのは、試験の引張方向に対して、その角度で材料を配置した積層板を使用したということを示しています。

それでは、この材料試験カーブを使って、材料特性を合わせこんでいきましょう。

この材料データはこちらです。

ちなみに私は「圧縮試験」を全く信用していません。単軸の圧縮応力場を作ることなど、不可能だと思っているからです。圧縮試験は、材料の試験ではなくて、その形を持った物体の特性を試験しているだけだと思っています。複合材ではないですが、参考記事を2個上げておきます。

線形特性

線形特性は、この 6パラメータです。ポアソン比 ν12 は別試験で取得済みということにします。また G23, G31 に関わる試験をしていないため、今回は G23=G31=G12 という過程をします。

E11, E22 は 0 度, 90度の試験の傾きを求めればよいです。私はこのように求めました。

  • E11=123000MPa
  • E22=6070MPa

G12 ですが、試験で ε22 も取得していれば、こちらの記事の近似式で、計算できるのですが、今回は、取得できていないため、実際に Radioss を流してみます。

45度試験の傾きはおおよそ G12 に連動しているので、2, 3 回計算すれば、それなりに傾きが一致してくると思います。私たちは普段から、アルミのヤング率は 70000MPa 等、かなり丸めた値を使ってますので、HyperStudy を使って突き詰めるほどでもないと思います。

少し調整したところ G12=2940MPa でいい感じに傾きが一致しました。

ここまでの材料まとめです。

傾きはいい感じで一致していると思います。

ここまでの Radioss データはこちらです。

なお Radioss モデルは、1mm 角のシェルに 0.2mm の厚さのプライを 5層積層して 1mm 厚さとなっています。つまり断面積は 1mm^2 です。

要素の断面力を出力していますが、断面力 = 公称応力。ついでに、引っ張る節点の変位量 = 公称ひずみとなります。

初期降伏応力の設定

0度と 90度は破断した応力をそのまま読めば良いでしょう。45度試験は、次の節で、降伏パラメータを同定するときに、同時に合わせこむので、おおよそで良いです。

45 度試験の応力は、おおよそ τ12 の 2倍ですから、40MPa にでもしておきましょう。

初期降伏応力をこのように設定しました。

非常に良い感じです。あとは 45度試験に合わすだけです。

0度と 90度は、実験に合わせて応力を下げなくてもおそらく大丈夫です。こちらを参照してください。

45度試験の降伏パラメータを同定する

45度試験のみ降伏応力の拡大が見れるので、この 3変数を同定します。

n12 は前回の記事で上に凸であれば 0~1 ということが分かっています。全くあたりが付かないのは b12 です。

n12=0 と仮定すれば Wp^n12=1 です。45度試験の応力はおおよそ τ12 の 2倍で、SIG12y=40MPa としているので、実験では 80MPa で降伏して 140MPa くらいまで拡大します。

なので n12=0 であれば b12=140/80-1=0.75 ですので、このあたりの桁であると考えて最適化を行います。

HyperStudy には材料同定にぴったりの最適化手法があるので、これを使います。本記事は相当ながくなってしまったので、HyperStudy の設定内容は割愛します。

https://2024.help.altair.com/2024/hwdesktop/ja_jp/hst/topics/tutorials/hst/tut_hs_1507_t.htm

別の材料ですが、材料同定の様子を細かく説明している記事です。

設計変数をこのようにして GRSM 手法で最適化をしたところ

このような解が得られました。

3桁程度にまとめて比較したところ

なかなかよい一致となりました。

HyperStudy のアーカイブファイルと最終 Radioss モデルをこちらに置いておきます。

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