Radioss: /MAT/LAW19 と /PROP/TYPE9 でできる、最も単純な布の表現
始めに
本記事では、布用の線形材料 /MAT/FABRI と幕要素特性に使える /PROP/SH_ORTH を使って表現することができるやり方の中で、最も単純なモデルの作り方を紹介します。
まず、布というと引張には強いけど、圧縮には抵抗力を持たないというイメージがありますが、材料の段階では、そういう材料を与えません。冒頭にも書きましたが、線形材料を使います。そのままだと、圧縮にも抵抗力を持ってしまうので、幕要素特性という、曲げの剛性を持たない要素特性の与え方を行います。
これにより、圧縮が掛かった時に、平面を保ったまま圧縮されるよりも、折れてしまう方が楽ですから、クシャっと折れ曲がってしまいます。これにより、圧縮の抵抗力がほとんどなくなります。
では実際の材料カード、プロパティカードの作り方と、簡単な例題を順に説明します。
材料カード
/MAT/LAW19 を使います。
https://help.altair.com/hwsolvers/rad/topics/solvers/rad/mat_law19_fabri_starter_r.htm
最小設定は、次の緑塗のパラメータです。ρi: 密度, E11, E22: 縦弾性係数, ν12: ポアソン比, G12, G23, G31: 横弾性係数です。
要素特性カード
/PROP/TYPE9 を使います。
https://help.altair.com/hwsolvers/rad/topics/solvers/rad/prop_type9_sh_orth_starter_r.htm
必須項目は、以下の緑と黄の場所ですが、黄色は -1 と打ち込んでおけば Radioss が自動的におすすめ設定を選ぶので、-1 にします。
(クリックで拡大)
緑の内容はこうなっています。
項目 | 内容 |
Ishell = 24 | アワーグラスが無くて、計算コストに優れた要素タイプの選択 |
N=1 | 板厚積分点数を 1 とすることで、曲げ抵抗がなくなります。 |
Thick | 布の厚さ |
Vx, Vy, Vz | このベクトルを要素面に投影して材料方向 1 を決める。デフォルトで (1,0,0) のため、/MAT/LAW19 の内容が等方性で、メッシュが YZ 平面からずれている場合は、入力しなくても良い。 |
例題
前節までの材料と要素特性を組み合わせて、布を表現した例となる簡単なモデルです。上の布は引張り、下の布は圧縮しています。下の布は圧縮に耐えられずに折れていることが、見て取れます。
材料カードは次の設定です。説明したパラメータのみの設定です。
要素特性カードは次の通りです。同じく説明したパラメータのみの設定です。
数値計算上、曲がるきっかけとして、厚み方向に多少の節点のずれが必要なので、/RANDOM というカードで、各節点に最大 0.1mm のずれを与えています。今回は理想的な真四角なモデルのため必要ですが、実際の製品形状なら、もともとずれが存在してると思うので、不要な場合が多いと思います。もしよければ /RANDOM を抜いたらどうなるかも見てみてください。かなり無理やりできつい感じの計算となります。
https://help.altair.com/hwsolvers/rad/topics/solvers/rad/random_starter_r.htm
こちらが荷重ーストローク線図です。引張 (tension) はきっちり荷重が上がりますが、圧縮 (compression) の抵抗力は、ほぼゼロです。
例題モデルのダウンロードはこちら: model01.7z