ゴムの材料試験は、引張試験と圧縮試験のどちらを使いますか?
始めに
ゴムなどの超弾性材料を定義する場合、材料定義カードに、単軸試験の SS カーブを与える、または、単軸試験の SS カーブに合うように材料パラメータを調整することになると思います。この時、引張試験データを与えるべきか、圧縮試験データを与えるべきか、どちらでしょうか?今日はこの問題に、できる限りわかりやすく回答したいと思います。
結論
先に結論を言うと、単軸の引張試験データを使うべきであり、圧縮試験データは使うべきではないとなります。これは双方の応力場を見てみるとはっきりわかってきます。順番に説明します。
引張試験の応力状態は
私自身 JIS 規格などに詳しくないので、JIS 規格に関する言及は控えさせていただきますが、次のようなダンベル状の試験片で行われるかと思います。この試験が優れているのは、中央の幅が狭くなっている部分に広く、単軸引張の応力場、つまり、引っ張っている方向の応力に対して、他の方向の応力が極端に小さい状態が出来上がります。
応力三軸度という指標では、完全な単軸の引張応力状態は 1/3 となります。ではこの試験の場合はどうなっているか確認しましょう。
中央の部分で、見事に単軸の引張応力場となっていることがわかります。材料カードは、単軸の応力場を求めているので、引張試験データがそれに適合することがわかります。
圧縮試験の応力状態は
圧縮試験は、このように円筒形状を押しつぶしていくと思います。ここで問題となるのは、このアニメーションもそうなっていますが、世の中には必ず摩擦があり、この試験を行うと、ゴムは必ず樽状の膨らむということです。
この変形の時点で、1軸の圧縮応力場ができていなそうなことは雰囲気でわかりますが、応力3軸度も見てみましょう。試験片の真ん中が見えるように、断面を見てみます。
単軸の圧縮の応力状態であれば、応力3軸度は -1/3 になります。しかし、実際には、そのような応力場が全く見られないことがわかります。
ゴム材料カードが入力されるのを待っているのは、単軸応力場における SS カーブですが、圧縮試験は、多軸の応力場になっています。これを入力として与えれば、当然おかしな材料特性となり得ます。
まとめ
再度になりますが、単軸引張試験データを使いましょう。
補足
利用する材料カードによっては、2軸均等引張試験や、平面引張試験データを利用する場合もあります。しかしこれらの場合も、やはり、引張試験を利用してください。
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