/MAT/LAW62 の弾性パラメータを HyperStudy で同定してみよう

altair_fukuoka
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Altair Employee
はじめに

こちらの記事で、パラメータの意味や特徴について説明しました。

これを踏まえて、単軸引張試験データに合うような弾性パラメータを HyperStudy で同定してみたいと思います。

なお、試験データは「引張」試験データです。こちらで説明していますが、圧縮試験では、単軸の応力場の形成は不可能であり、材料特性データとして利用するには不向きです。

では、実際にやってみましょう。

実演 - 合わせこみたいゴム材料

今回、合わせこみを試みるのは、この単軸引張試験データーです。

ちなみに、単軸引張試験は、時としてひずみ 5 とか 10 とか限界まで引っ張ったデータを含むかもしれませんが、データの全部に合わせこむのではなく、必要なところを合わせこめば良いと、私は考えています。

例えば、このような実験データを全部合わせこむとします。話を簡単にするために、2本の直線で合わせこまなくてはならないとします。

するとこのような合わせこみになるでしょう。全体を見たいなら、悪くないですが、もしそのシミュレーションの領域が前半なら、全然再現性はありません。

しかし、必要な領域に絞れば、再現性は高まります。

実演 - Radioss モデルの準備

さて話は戻りますが、実験データのカーブの形は先ほどの記事で行くと、α=-2 とか α=2 とかの形に似ているので、今回は α1=2, α2=-2 で決め打ちとして、適応する μ1, μ2 を合わせこむことにしてみます。(うまく合わなかったら α も合わせこもうかと考えていましたが、結果的には、きっちり合わせこむことができました)

また、カーブの最初の傾き (ヤング率 E) が 1.0 MPaくらいです。合わせこむのでおおざっぱでよいです。材料のポアソン比が 0.2 と判明しているものとします。そうすると横弾性係数 G はおおよそ 0.4MPa くらいです。μ1+μ2=G ですから、それぞれ半分ずつ、μ1=μ2=0.2MPa で合わせこみ開始、ということにしてみます。

ということで、合わせこみのための材料モデルは次のようになりました。

この初期設定で、応力ーひずみカーブは次のようになります。パラメータの癖をつかんでいたため、十分な初手が打てたと思います。

Flag_Visc=1 と特に先の記事でも扱っていなかったパラメータですが、リファレンスにこのようにありましたので、今回はポアソン比 0.2 とまあまあ圧縮される材料ですから 1 としています。

1要素モデルで、解析条件はこのようにしています。

T01 履歴ファイルへの出力として、強制変位を与えている節点の変位と、断面力を出力しています。1mm 角の立方体としたので、変位=公称ひずみ、断面力=公称応力、として扱えます。

実演 - HyperStudy での合わせこみ

設計変数とする μ1, μ2 ですが、今回はテンプレートファイルを使いました。

緑の部分がテンプレートファイルによる仕掛けの部分です。実際は HyperStudy 付属のテンプレートファイルエディタで作成するため、書式とかを覚えなくても大丈夫です。

一応説明すると

{mu1, %20.15g}

%20 で全体で 20文字を使い、.15 で小数点以下は最大 15文字つかい、g で指数表記か小数点表記はコンピュータに任せて、設計変数 mu1 を書き込む、という命令文になっています。

応答ですが、HyperStudy にはグラフの差を求めることのできる Area という関数があるので、実験と Radioss の SS カーブの差を面積で評価します。完全に重なれば、面積は 0 ですので、最適化では最小化します。

Area はデータのポイント数が異なっていても、簡単にグラフの差を評価できるので、使いやすいです。HyperStudy 公式ヘルプ内のチュートリアルでも使われています。

https://2024.help.altair.com/2024/hwdesktop/ja_jp/hst/topics/tutorials/hst/tut_hs_1507_t.htm

そして最適化ですが、先ほどの面積を最小化することを目的として、

最適化アルゴリズムは GRSM で反復計算数は最大で 50 回としました。

GRSM は HyperStudy の中で最も強力で、最も汎用性の高い最適化手法で、私も次の動画で紹介しています。私は GRSM しか使いませんし、GRSM で良い答えが見つからない場合は、良い答えが存在しないか、最適化のやり方が良くないと考えています(他のアルゴリズムなら良い解が見つかるかも、とは考えないです)。

得られた最適解はこうなりました。かなりうまく合わせこめたと思います。

ここまで、説明はかなり省略してきているので、詳しくは動画をご覧ください。

実演データのダウンロード
  • UNIAXIAL_TEST_DATA.txt: 実験データ
  • model01_0000.rad, model01_0001.rad: Radioss モデル(初期)
  • model01_0000.tpl: 材料パラメータ書き換えのテンプレートファイル
  • Study_1.hstx: HyperStudy アーカイブファイル(最適化までの結果を一つのファイル、アーカイブ、にしています)

動画による説明

動画ファイル .mp4 のダウンロード

Radioss_LAW62材料の弾性パラメータをHyperStudyで同定するための設定内容を説明している動画.mp4