/MAT/LAW25 CRASURV 材料を順を追って理解していきます

altair_fukuoka
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Altair Employee

はじめに

CFRP などの、特に積層向けの複合材料と言えば /MAT/LAW25 (/MAT/COMPSH) の CRASURV 材料なのですが、非常にパラメータが多く、複雑ですので、いきなり全パラメータを埋めていくのは難しいと思います。

そこで、本記事では

  1. 線形材料としての定義
  2. 応力に上限を設定する。
    1. 降伏するが、降伏応力は拡大しない
  3. 降伏応力も拡大する、非線形材料としての定義

という順番で、階段を一段ずつ上るように説明していきます。用途によっては 1段目、2段目で十分ということもあると思うので、そういう意味でも、この順番で理解を深めていくのが良いと思います。

https://2024.help.altair.com/2024/hwsolvers/ja_jp/rad/topics/solvers/rad/crasurv_formulation_starter_r.htm

線形材料としての定義

入力が必要な項目はまず、次の緑塗の箇所です。ここは線形特性値ですので、特に説明は不要かと思います。Iform=1 はそういうものだとお考え下さい。

さらに、こちらの緑塗の項目の設定が必要です。

これらは、各材料方向の、引張、圧縮での降伏応力です。線形特性にするのに、なぜ降伏応力に 1e30 と打ち込まないのかというと、デフォルト値が 0 となっているためです。デフォルト値が 0 ですので、初めから降伏が始まってしまうため、1e30 として、実質的に降伏させないようにします。

実際にはこのようなカードイメージとなります。

このように 5枚の積層で、上から 0 度、90度, 45 度に配向した 1要素モデルで 1% の引張試験を行ってみます。引っ張る方向は全体座標系の X 方向です。

このような結果になります。0 度, 90度は、そのまま E11, E22 に 0.01 掛けた数字になっています。45度は、ものすごくざっくり計算すると σxx ≒ G12 * 4 * εxx = 168 MPa ですので、まあ大丈夫です。

なお 45度試験片の引張試験における、微小変形領域内でのひずみ、応力の取り扱いについては、こちらの記事にまとめてあります。あくまで微小変形領域内ですので、おおよその目安程度にしてください。

この入力ファイルはこちらです。

応力に上限を設定する

次に、応力の上限を設定してみます。この値で降伏しますが、降伏応力の拡大はなく、一定値となります。

実は、入力箇所は、先ほど線形材料と同じです。ただ、初期降伏応力値を変更します。

例えば、このような設定例となります。先ほどから、緑の箇所を変えただけです。

先ほどの 1 要素モデルで、今度は 2% の引張と圧縮試験をすると、このようになります。

材料引張方向の公称応力-公称ひずみ線図を書くとこのようになります。

非常にざっくりしたところですと、45 度は降伏応力の 2倍くらい出ていれば OK です。実は 45 度材料の引張試験は、材料方向 1, 2 に対して、σ12 の単軸応力場ではなく、σ1, σ2, σ12 が絡み合う応力場になっているので、引張と圧縮で、若干降伏応力が異なります。

ちなみに、このように応力が一定でも、実際の形状に対して使ったときに、荷重が低下する、という現象はちゃんと確認できます。それについてはこちらを参照してください。

このモデルのダウンロード

降伏応力の拡大

これまでのモデルに、次の b と n を追加します。

この b と n でどのように降伏応力を拡大させるかというと、次の式で拡大します。W は塑性エネルギです。

b と n がグラフにどのように影響するのか、描いてみました。n は、グラフを凸にするか凹にするのかを決め、b はグラフの傾きを決めます。

この材料モデルの難しいところは、塑性エネルギという測定が困難な物理量を使っているところです。一応、応力、ひずみ、弾性係数から計算できなくはないですが、特に問題は b12, n12 の決定です。先に書いたように、純粋なせん断応力場を作る試験ができませんので、無理やり σ12-γ12 線図を作っても、そもそもその線図が誤差だらけです。その線図からエネルギーを計算しても、さらに誤差が増えます。そこに合わせこんだ b12, n12 を使って、実際に Radioss を流してみると、結果が大きく異なってきます。

ということで、何かしらの実験データから直接 b, n を求めるよりも、リファレンスに例題が 2個ついているので、そこからの微調整という形が良いのではないかと思います。HyperStudy で合わせこむ例なども作ってみたいと考えています。

では、このような

2% の引張と圧縮試験を行ってみました。

試験荷重方向 (全体座標系X) の公称応力-公称ひずみ線図は、このようになりました。

この計算モデルはこちら

これで、LAW25 の材料特性がおおよそつかめたのではないでしょうか?さらに細かい設定は別の記事にすることにして、本書はここまでとします。

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