Residual vector を理解する例題、その2

始めに

前回の記事で、モード合成法の周波数応答解析をすると Residual Vector が足されている、という気付きを行いました。

今回の記事では、一歩踏み込んで、なぜ、Residual Vector が荷重条件から連想される形をしていたのか、ということを理解していきましょう。

前回の記事を前提としているところがあるので、是非前回の記事から読んでいただければと思います。

どのようなモードが追加されていたのかを知る例題

演習モデル:

まず Residual Vector を足す理由ですが、周波数応答解析では、周波数の高い高次のモードを削りますので、そのために荷重に対する素直な変形モードの表現ができなくなることがあります。というか、経験則上、多いです。実際、前回の記事では、もともとの固有モードでは、全く変形を表現できませんでした。

そこで、昔の人は考えました。静解析の変形モードを加えればよいではないかと。

ということで、例題モデルを実施してみてください。こちらはこのような慣性リリーフ解析です(周波数応答解析ではありません)。慣性リリーフ解析というのは、特定の節点の拘束で、力のつり合いを保つのではなく、節点全体で、つり合いに必要な反力、反モーメントをじんわりと受け持つという解析で、空中に浮かぶ航空機などで良く使われる手法です。

モデルの Bulk セクションのここが合図となっています。

さてこの結果はというと、前回の記事と見比べてほしいのですが、完全に前回の記事で得られた変形モードです。

このように Residual Vector は荷重に対する静解析の変形モードが元になっていたのです。

Residual の意味を知る例題

演習モデル:

しかし、まだ分からないことがあります。英語の Residual とは余っているとか、残っているとか、そういう意味です。しかし Residual vector は余るどころか、OptiStruct 自身が追加しているので、余るとか、残るではどうにも腑に落ちません。本例題で、そこのところを府に落とし込んでみたいと思います。

なお、この解釈ですが、私が勝手に行っているだけであり、数学の歴史を調べたわけではないので、もともとの数学の歴史に対して、的外れな違うことを言っているかもしれません。本節自体が、おまけみたいなところがありますので、大目に見ていただければと思います。

前回の記事と同じモデルですが、今回は抽出するモードの数を 2 または 3個としています。

ではこれらの Residual Vector を見てみましょう。

抽出した固有モードの数が変わると Residual Vecotor も変わっています。(ちなみに周波数も挙がっていることにも注目しておいてください。あとで出てきます)

なぜなのかというと、単純に静解析のモードをそのまま使用できるモードに追加できないからです。前回の記事で、重ね合わせに利用する波は全て独立していなくてはならないということをお話しました。ですので、OptiStruct は静解析のモードから、抽出した固有モードの成分を取り除いた、「残り」のモードだけを追加していたのです。

イメージ的には下の用な引き算をしていたのです。

これで Residual Vector が、残ったベクトルである、という意味が分かるかと思います。

なお、周波数が上がっていましたが、そもそもあの周波数をどのように出しているのかというと、Residual Vector をモードに加えておいて、もう一度固有値を抽出しています。基本的に元のモードが多いほど、Residual Vector はガビガビな形になります。皆さんご存じのように、高周波になればなるほど、モードがガビガビしてきますので、モード抽出量を増やすほど、Residual Vector のところに現れてくる周波数は高くなります。

さて、Residual Vector が固有モード成分を差し引いた残りであるとこことを知ったわけですが、となると、十分な固有モードがあって Residual Vector を再現できちゃったらどうなるの?という疑問が湧いてきたかと思います。

次回、最終回で、そこの部分をお話したいと思います。

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