Residual vector を理解する例題、その1


はじめに
OptiStruct でモード合成法で周波数応答解析を行うと residual vector という技術が気づかないうちに使用されています。日本語だと余剰剛性、余剰ベクトル、残差ベクトルなど様々な呼ばれ方がありますが、OptiStruct の英語の原文で residual vector と表記しているので、本記事では、そのまま英文字で residual vector と記述することにします。
いったいこの residual vector とは何なのかを、できるだけ分かりやすく、できるだけ数式を使わずに、簡単な例題を通して理解していこうと思います。
Residual vector の存在に気付くための例題
例題モデル:
モード合成法による周波数応答解析の根幹は、あらゆる形が、波の重ね合わせ(足し算と引き算)で表現できるという法則に基づいています。
そのため、固有値解析で(*1)、変形の形の基礎となる波を取得して、その波の重ね合わせで、変形を計算しようというのが、モード合成法です。
一方で、節点の変位、速度などを直接計算しようというのが、直接法というわけです。
*1) 原理的には、どんな波でも良いのですが、数学的に解こうとすると、ある形 S、波 A, B, C があるとして、S=A+B だったり S=A+C のように、答えが複数あると数学的な問題として成り立たずに解けなくなります。ですので、必ず一つの答えしかないように、同じ成分でできた波を作らないように、と考えたときにちょうどそのように成分が被らない波を用意してくれるのが固有値解析なのです。ちなみに、数学的には独立であるとか直交しているとか言います。
本来数学的にはモード合成法も直接法も等価です。100万自由度の直接法と 100万モードのモード合成法は同じです。しかしシミュレーションのテクニックとして、99万9千モードくらいを削って、1000モードくらいで計算してしまうなどを行うことで、計算コストを小さくしているのです。
なかなか Residual Vector の話に入れませんが、やっと本題です。
このような問題を用意しました。上の方で押しているので、ぐにゃっと曲がってほしいところですが、
意地悪で、1モードしか抽出しません。
このモードは、左右に剛体運動するだけなので、どう考えても、このモードから変形が起きるモードを生み出せるはずはありません。
ところがこちらが周波数応答解析の結果です。何をどう見ても曲がっています。
モード合成法である以上、何か利用できるモードが追加されている、以外に考えられません。
本モデルは、周波数応答解析で用いたモード形状も出力するように要求してあります。
HyperView で見ると何かあります。
まさに、周波数応答の結果とそっくりなモードが追加されていました。(まともに変形できるモードはこれだけなので、全ての周波数で、同じ変形をしています。)
この、いつの間にか追加されているモードが Residual Vector なのです。
ちなみに、モード変形量を、縦にずらっと並べるとベクトルですよね。物理的にはベクトルである意味はあまりないと思うのですが、数学や数値計算的には、ベクトルにしておくと行列演算が汎用的で簡単になる(人の目からはむしろややこしくなりますが)ので、ベクトルにします。
Residual Vector が Vector である所以です。モード変形形状をモードベクトルと呼んだりするのも、同じ理由です。
長くなってしまったので、シリーズ化してみたいと思います。
今回、なぜか都合よく、荷重から連想できるモードが追加されたと思いませんか?次回は、なんで、荷重から連想できるモードが都合よく加わったのかを説明してみたいと思います。
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次回はこちらです。なぜか文字数が足りないと言って投稿できないため、無駄に文字数を増やしています。
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