はじめに
Radioss はビーム要素の場合は、プロパティで、回転自由度をフリーに、回転自由度に対して剛性をなくしてしまうことができます。
https://help.altair.com/hwsolvers/ja_jp/rad/topics/solvers/rad/prop_type3_beam_starter_r.htm
しかし、上の図を見てわかる通り、並進自由度については、オプションがありません。
そこで、本記事では、KJOINT2 ばねをビーム要素に接続することで、並進自由度をフリーにするというのを模擬してみたいと思います。
KJOINT2 選定の理由
6自由度持つ、つまり 6自由度のばね定数を自由に決めることのできるばね要素特性は他にもあります。ただし、適切な質量、慣性モーメント、ばね定数を決めないと、小さすぎる時間ステップになってしまうなど、定義の難しさがあります。
一方で KJOINT2 の場合、接続している要素から、質量と慣性モーメントをもらい、エンジンの /DT/NODA/CST で指定した時間ステップを満たせるばね定数が自動で決まるので、定義の難しさがなくなります。
本記事では、そこの難しさを取り除くために KJOINT2 を選んでいます。なお、もちろん物事は全て、表裏一体ですので、失ったものもあります。それは例題の中で説明します。
例題1: ビームの軸方向の並進自由度を抜くモデル
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モデルとしては、ビーム要素を2個に割って、間にばね要素をはさんでいます。例題ですので、ある程度、見やすい大きさのばね要素にしています。
様々なソルバーを使っている方なら、ばね要素の見た目と実際の要素座標系は、関係ないことが多いということをご存じかと思いますが、KJOINT2 を使う場合は、見た目で要素座標系が決まりますので、今回は、ばねの見たままの軸方向が、そのままばねの x 方向となります。
今回のモデルでは、/PROP/KJOINT2 は並進ジョイントで、時間増分に対して少し弱めのばねにしています (それでも十分に固いので、安定性を私は好みます)。
https://help.altair.com/hwsolvers/ja_jp/rad/topics/solvers/rad/prop_type45_kjoint2_starter_r.htm
この場合、軸方向のみばね定数が 0 で、残りは可能な限り大きなばね定数 * 0.1 が入ります。
右上を軸方向に引っ張っても、ばねが自由に伸びるだけで、下のビームは付いてきません。
しかし、横方向にずらすと、しっかりと下のビームもついてきます。
例題2: 横方向の自由度を一つ抜くモデル
ダウンロード:
今度のモデルはこうなっています。これが KJOINT2 ばねを使うときに失ったものです。/PROP/KJOINT2 はフリーにできる自由度の組み合わせが決まっているので、自分の求める組み合わせが無い場合、メッシュの作り方で対処する必要があります。
dx のみをフリーにできる並進ジョイントでなんとかするために、横方向にばねを入れています。
また、ばねを2本にすることで、モーメントを打ち消すことにしました。ただ、この辺は好みとかこだわりとかもあると思います。
/PROP/KJOINT2 は例題 1 と同じです。
今回は引っ張ると付いてきますが、
ちゃんと自由に横滑りします。
挑戦問題
記事がかなり長くなったので、例題として掲載するのはやめましたが、/PROP/KJOINT2 には平面ジョイント type=7 もあります。
並進 2軸をフリーにできます。
例題 1 と 2 のモデルで type =7 にだけ変えたらどうなるのか、挙動を予測しながらやってみてください。
(需要があれば別記事にします)