6自由度バネ要素特性 /PROP/TYPE13 の質量、慣性モーメントの決め方の一つを説明します。
始めに
陽解法の Radioss では、質量、慣性モーメントをゼロとしてしまうと、時間増分もゼロになってしまうので、バネ要素であっても適切な値を与える必要があります。ただ、一般的にバネ要素で表現するような部品について、質量と慣性モーメントがはっきり分かっていることも少ないのではないでしょうか。そこで本記事では、私が実際に取っている手法をお伝えします。あくまで考え方の一つですので、うまくアレンジしてみてください。
1, とりあえずすごく小さい値を入れる
リファレンスに dt の計算式は書いてあるのですが、きっちり逆算するのも何かと手間がかかりそうです。
そこでまずとても小さい値 1e-20 を入れてみます。
スターターを流してみます。今回のモデルはシェル要素とバネ要素が入っていますが、バネ要素の dt はシェル要素よりも 5桁小さくなっていました。
2 メインの要素dt の 10倍を目指して質量、慣性モーメントを増やす
バネ要素は、計算コストを下げるための簡略化だと思っていますので、 全体の時間増分は、やはり解析の中心となるシェルやソリッド要素で決定していてほしいと思います。ということで、安全目を取って、先ほどのシェルの dt の10倍、つまり先ほどの 1e6 倍を目指してみたいと思います。
dt の式はややこしいですが、ざっくりと言うと dt ∝ √(M or I) / √K ですので、質量と慣性モーメントを 1e12 倍すれば、その平方根でおおよそ目標の 1e6 倍となりそうです。先ほど M=1e-20, I=1e-20 でしたので、ここでは M=1e-8, I=1e-8 を入れてみます。
これでスターターを通すと、バネの dt = 1e-6 のオーダーとなり、シェル要素 1e-7 のオーダーより一つ大きくすることができました。
捕捉
私はこのようなやり方で質量、慣性モーメントを決めています。逆にこのやり方で出てくる質量、慣性モーメントが大きすぎると感じる場合は、バネ定数 K, 粘性 C が大きすぎないか疑ってみてください。
モデルが大きくて、スターター通すにも時間が掛かるような場合は、バネ要素、バネ特性だけ抜き出してみてください。