陰解法の非線形静解析モデルを、陽解法の非線形動解析モデルに変換する、最小の方法
始めに
本記事では、次の、非線形静解析モデルを、陽解法の非線形動解析モデルに変換する方法をお伝えします。非線形静解析が収束しなかったときに、サッと陽解法の非線形動解析に持っていくための記事となっています。ただし、本記事は、エラーの出ない最小の変換をお伝えするものであり、適切な解析を行うためのテクニックは含みません。
材料など細かい設定は、モデルをご覧ください。
非線形静解析モデル作成時点での準備
非線形静解析 (ANALYSYS = NLSTAT) のサブケースでは、強制変位は SPC、力や変位は LOAD で指定することができます。ざっくり説明すると、静解析には時刻の概念はないので、最終的にその状態が解ければよいということで、こういうことが可能です。
しかし、一方で、動解析には時間の経過が必要ですので、強制変位や荷重は時刻に対する値とする必要があります。そこで、強制変位や荷重はあらかじめ DLOAD ( Dynamic Load = 動的な荷重) で指定しておくと便利です。静解析には時刻の概念はないのですが、インクリメントと呼ばれる計算の進捗度を、時刻に見立ててくれます。
DLOAD には時間の概念のない SPC や FORCE などは指定できないので TLOAD1 というカードをいったん挟むことで、時間の概念を持つ条件とします。なお TLOAD1 では SPC の代わりに SPCD にする必要があります。
本記事のモデルでは、次のような関係になっています。TLOAD1 が
- SPCD を参照して
- 強制変位として扱うこととして
- 時刻に対する値を決めます。
実際は表 TABLEG は時刻ごとの倍率であり、その倍率は、荷重条件 (SPCD や FORCE などで指定した大きさ) にかかります。この例では、時刻 0 で、強制変位は 1.0x0.0=0.0、時刻 1.0 で 1.0 x -0.2 = -0.2mm となります。SPCD や FORCE などは、大きさを 1 としておくと、表を作るときに分かりやすいと思います。
HyperWorks では、このようになっています。
このモデルのダウンロードはこちらです。
陽解法の非線形動解析に変換する
テキスト上では、次のように変えるだけです。ANALYSIS を NLEXPL。SPC, DLOAD, NLOUT はそのまま引き続き採用。TTERM=1.0 [秒] を追加。本モデルは、Mg, mm, s を単位系としているため、TTERM の単位は秒となります。
HyperWorks ではこうなっています。
なお、このモデルはくるくる回ってしまいます。本モデルは、剛体移動としては、Z並進しか拘束していないので、答えが一つに定まらない、実はとても不安定なモデルです。非線形静解析で計算ができてしまいましたが、実は、収束しなくても何もおかしくない問題でした。逆に言うとそういう不安定なモデルにも何らかの回答を出せるのが、陽解法の動解析ということになります。
このモデルのダウンロードはこちら
補足
今回は、本当に、非線形静解析を、陽解法の動解析とするだけの内容となっています。この変換だけでは、サイクル数が多くて計算にすごい時間が掛かったり、静的とは呼べないほどの大きな振動が乗ってしまったりと、不都合なことが出てくると思います。実際に陽解法動解析で、静的な解析を、現実的な計算コストで行うには、
- 現象時間 (TTERM) の適切な調整
- 振動の乗りにくい滑らかな時間―荷重カーブの設定
- 減衰の利用
- マススケーリングによる時間ステップの増加
などが必要になってきます。OptiStruct を対象とした記事はまだ書いていないのですが、Radioss 向けの記事はありまして、内容自体は参考になると思います。
https://community.altair.com/community?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0119762
いろいろ検証して記事にしたいと考えていますが、待てない、自分で調べる、という方は次のキーワードを調べてみてください。
TTERM -> 現象時間の調整。本記事でも利用。
https://2022.help.altair.com/2022.1/hwsolvers/os/topics/solvers/os/tterm_io_r.htm
TABLEG などの TYPE=SMOOTH -> 滑らかなカーブ。TABLEG 以外でも良いのですが、テキストとして見やすくて編集しやすい TABLEG が個人的な好みです。
https://2022.help.altair.com/2022.1/hwsolvers/os/topics/solvers/os/tableg_bulk_r.htm
DYREL=YES -> 減衰の利用
https://2022.help.altair.com/2022.1/hwsolvers/os/topics/solvers/os/dyrel_sub_r.htm
TSTEPE, TYPE=NODA -> マススケーリングの利用
https://2022.help.altair.com/2022.1/hwsolvers/os/topics/solvers/os/tstepe_bulk_r.htm
https://2022.help.altair.com/2022.1/hwsolvers/os/topics/solvers/os/tstepe_sub_r.htm
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https://www.altairjp.co.jp/optistruct/
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