接着剤用材料 MCOHE の説明と設定サンプルモデル
始めに
層間剝離等の接着剤を模擬するためのモデリングの基礎となる、接着剤用材料 MCOHE の説明をします。
MCOHE の説明
普通の材料は、応力-ひずみの関係性を決めるものですが、MCOHE の場合は、応力-伸びの関係性を決めるものになります。と言うのも、接着剤の場合、ひずみを測定しようにも元の厚さが測定困難であったり、モデル作成の都合上、本来の接着剤の厚みとは異なる厚みで要素を作らざるを得なかったりと、ひずみよりも、伸びの方が扱いやすいからです。
具体的には次のような、三角形の関係を用います。ユーザーが指定すべきパラメータは COHE, CRTOD, MAXOD です。
COHE は三角形の面積です。次元は、応力 * 長さです。エネルギー解放率などとも呼ばれています。CRTOD は頂点となるの伸び、MAXOD は応力 0 になる伸びで、次元は長さです。
もしかしたら、下図の最大応力 TMAX や、初期の傾き G (次元は 応力/長さ) を使って入力したいかもしれませんが、それらはどちらも COHE, CRTOD, MAXOD に変換できます。
例えば TMAX, G, COHE が分かっているとします。
TMAX = G * CRTOD →→→→ CRTOD = TMAX/G
です。
また
COHE = TMAX * MAXOD / 2 →→→→ MAXOD = COHE/TMAX * 2
です。このような感じで、3個が分かれば、残りの 2個はおのずと分かります。
PCOHE, CIFHEX, CIFPEN の説明
先ほどの MCOHE 材料は、要素プロパティ PCOHE が参照します。
https://help.altair.com/hwsolvers/os/topics/solvers/os/pcohe_bulk_r.htm
PCOHE は要素 CIFHEX または CIFPEN が参照します。CIFHEX はヘキサ要素、CIFPEN はペンタ要素で、テトラ要素には対応しません。また、普通のヘキサペンタと違い向きが重要で、必ず、シェル要素を厚み方向に押し出して作成してください。
https://help.altair.com/hwsolvers/os/topics/solvers/os/cifhex_bulk_r.htm
https://help.altair.com/hwsolvers/os/topics/solvers/os/cifpen_bulk_r.htm
サンプルモデル
次の単純なモデルを作ってみました。
接着剤の材料 MCOHE は COHE = 20 MPa*mm, CRTOD = 1mm, MAXOD = 2mm です。なので最大応力 TMAX = COHE / MAXOD * 2 = 20MPa となるはずです。結果を確認してみましょう。
CIFHEX 要素に対しては応力出力が無いので、代わりに鉄の応力コンターのアニメーションです。20MPa まで増えたあと、減少して 0MPa となっています。
伸びと応力の関係をグラフでも表示してみます。設定どおりの結果になっています。
本例題のダウンロード: model.fem
補足
MCOHE は異方性がありません。良く使われる下図の接着剤剥離の 3モードの区別もありません。モードの違いや弾性係数の異方性を考慮したい場合は MCOHED が利用できます。MCOHE より少しややこしくなります。
https://help.altair.com/hwsolvers/os/topics/solvers/os/mcohed_bulk_r.htm
アルテアジャパン公式製品リンク
https://www.altairjp.co.jp/optistruct/
お問い合わせ先
https://www.altairjp.co.jp/contact-us/