InspireのSimSolidソルバーを使用する際の注意点

Naoya Akagawa_20448
Naoya Akagawa_20448
Altair Employee

SimSolidはOptiStructとは違う、ソリッドパート専用の高速メッシュレスソルバーです。→OptiStructソルバーとの比較
従来のFEMとは違うため、設定方法や注意点が大きくことなる箇所があります。
良い解析結果を得るためにどのような設定をしていけば良いのか、詳しく説明していきます。

モデルの受け渡し設定

SimSolidでは、ファセットでパートの形状を再現します。
そのため、穴やフィレットといった曲率のある形状に対して、このファセットがうまく形状を追えるように解像度を設定する必要があります。
解像度は「標準」「中間」「細かい」という設定があり、穴やフィレットといった曲率のある形状は「中間」「細かい」を設定します。
※ただし、この解像度を上げると解析時間は長くなります。
解析を実行し、SimSolid用のデータを作る際、このような感じで曲率部分がモデリングされます。
image

設定は左上の「ファイル」>「プリファレンス」から以下画像のように行うことができます。
image

もしくはパート毎に、プロパティエディターから設定することも可能です。
パート毎に設定することで、不必要に計算コストが上がらなくなります。
image

解析設定

解析の設定(境界条件の定義)を行います。
メッシュレスですので、細かいフィーチャーを削除する必要はありません。
注意:パート同士をマージしないでください。SimSolidでパートをマージしない理由は以下になります。

  1.  パート間の反力の計算が正確になる
    繰り返し回数が少なくなり、パートごとの収束がよくなる
    マージするとパート間の反力計算ができなくなる
  2. 計算が速くなる
    マージされたパートは計算時間が長くなる
    小さなパートごとに分かれていた方が並列効果が上がり、計算が速くなる
  3. 実物の状態に近い

解析条件の定義方法に関しては多くのものがOptiStructソルバーと同様に設定が行えます。
しかし、違った定義方法が必要になる場合がありますので、そこをご説明します。

1.接触設定

解析を実行する上で接触設定が重要です。SimSolidはOptiStructと違い、パート間の接触をポイントとして定義します。
また、ギャップや貫通があっても問題なく解析が実行できます。
このポイント、ギャップと貫通により独特な定義の仕方をします。
接触定義の方法

  1. ギャップや貫通量を把握する。
  2. ギャップや貫通量に従い、検索値を設定する。
    ※上手く設定できない場合は、対象のパートのみ表示して接触を定義します。
  3. 接触ポイント数を確認し、解像度を変更する。
    ほとんどの接触の解像度は「低」で問題ありません。ですが、一部の接触では解像度を上げる必要があります。
    特に一列のみの接触ポイントは「ヒンジ」のような挙動をすることがあります。この場合は必ず解像度を上げてください。
    image
    ※全ての接触の解像度を「高」にする必要はありません。計算コストの増加を招きます。
  4. 接触タイプを設定する

また、接触テーブルから、ポイント数をソートすることで、解像度を変更すべき場所を特定できます。
image

※SimSolidでは「スライド」接触と「分離」接触が混在できます。
※「分離」の解像度は「高」推奨です。
※応力を評価したいパートはなるべくギャップや貫通がなくなるようモデルを修正します。

2.コネクター

OptiStructソルバーとちがい、「変形する(RBE3)」コネクターを定義することができません。
解析を実行する際に警告表示が出ますが、「続ける」を押すとInspireが「変形しない(RBE2)」コネクターへ自動で変換します。
image

3.荷重(リモート荷重)、集中質量

リモート荷重や集中質量を定義する場合は、コネクター経由で定義するとエラーとなる可能性があります。
また、リモート荷重は「変形する」しか定義することはできませんが、集中質量は「変形する」「変形しない」が考慮されます。
定義方法は以下動画をご参考にしてください。


4.締結、ジョイント

OptiStructは締結を一次要素で表現しますが、SimSolidは、Inspireの画面に表示されるボルトをそのまま「パート」として使用します。
したがってより現実的なモデリングとなります。(ボルトのワッシャー径はボルト径の2倍、ボルト径は選択された穴の最小径になります。)
ボルトの接触条件等は以下の画像のようになります。締結されるパート間は「スライド」が定義されます。
このパート間のスライド接触は接触アイコンから確認、変更することが可能です。
また、ボルト部の接触条件はInspire上では確認できません。
image
また、ジョイントはv2024で対応しました。

5.強制変位、サポート

Inspire2022.3.1において、円筒座標系を指定した強制変位、サポートにはまだSimSolidが対応しておりませんので、ご注意ください。
強制変位は円筒座標系を指定しても、直交座標系として定義されます。
また、局所座標系を指定したサポートは警告が表示されます。
image

解析の実行

SimSolidはアダプティブ解析を行います、何を評価するかによってアダプティブ設定を変更する必要があります。
image

  • 剛性アダプティブ:変位や固有モードを評価する場合。(全体のざっくりとした挙動を確認する際に有効です。また、計算時間は最速です)
  • 応力アダプティブ:応力や座屈を評価する場合。(通常の解析ではこちらを使用します)
  • カスタム:高度な設定が行えます。

より精度のよい結果を得るために

こちらの設定で、より精度の高い結果を得ることができます。
ただし、解析のコストが増大し、時間がかかること、SimSolidはFEMを置き換えるものではないことに注意してください。

  1. SimSolidファセットの解像度を全て「中間」もしくは「細かい」にします。
    特に応力集中部などがあるパートは「細かい」にした方がよいです。
  2. 応力集中しているパートの結合の解像度を「高」にします。
    改善しない場合はすべてのパートの解像度を「高」にします。
  3. 解析ターゲットをカスタム設定とします。
    カスタム設定は「SimSolid解析の実行」の「解析ターゲット」の「カスタム」から以下のように設定します。
    もしくは「ファイル」>「プリファレンス」の「実行オプション」から設定できます。
    image
    フィーチャーアダプト、薄肉ソリッドアダプトをオン、解析精度レベルを「高」としたうえで、
    アダプティブソリューション数を4→5→6と上げ、解の収束を確認してください。image

解析が失敗した際は

拘束不足や接触ポイントの問題で「モデルの荷重またはサポート設定が不適切です」というエラーメッセージで解析が失敗することがあります。(error 18)
image
その際はエラーメッセージにあるように、固有値解析のみを実行します。
固有値解析を実行する方法は、適当な共振数を入れ、荷重ケースのチェックボックスを外します。
「荷重ケースからのサポートを使用」でサポートを入れれば、サポートを考慮することができます、外してフリーフリーとすることもできます。
固有値解析の結果からサポートや接触を改善します。
image

FEM異なり、単点のみにサポートを定義する場合は、このようなエラーが発生しやすいです。
この場合は、別の境界条件の付与方法を検討していただくことになります。
パート数が増えても解析コストはあまり変わりませんので、面での固定ができるようにパート数を増やすことも視野に入れていただければと思います。(そちらの方がより現実に近いモデリングになるかと思います。)
また、「スライド」、「分離接触」が定義されている場合は「固着」に変更して解析がうまく実行できるか確かめます。
上記で解決できない場合は、モデルをサポートまでお送りください。

ポスト処理

ポスト処理も基本的にはOptiStructと同様です。
異なる部分に対してご説明します。

コンター図

SimSolidはコンター表示する際に解析結果を粗いメッシュに投影します。
そのため、結果が乱れることがあり、メッシュを改善するために、モデルを右クリック>「結果の精査」をよくなるまで繰り返します。


 

さらに高度な結果処理や解析を実行、モデリングを理解するには

さらに高度な解析を実行するには、もしくはどのようにモデリングされているか理解するにはSimSolid単体版を使用します。
SimSolidはInspireのSimSolidソルバーをご利用することができれば、Standard版を同じライセンスとユニット数でご利用いただけます。
SimSolidにはライセンス数とユニット数によりBasic、Standard、Advanced版がご利用いただけます。各バージョンで何ができるかは→製品比較
どのバージョンを利用できるかご確認したい場合は担当営業、もしくはサポートまでご連絡ください。

SimSolid単体版へ境界条件を含めたモデルを受け渡す場合は2通りあります。

1. SimSolid解析の実行→エクスポート

SimSolid解析の実行からエクスポートすることで、解析モデルを出力することができます。

image

2. 実行フォルダから解析モデルを読み込む

Inspireは解析に使用するファイルを実行フォルダに出力します。
モデルの解析の履歴が残るので便利です。
実行フォルダのアクセス方法は結果を表示して以下の画像のように操作します。
image

出力後にモデルの変更を反映させるSimSolidConnect

上記二つの方法で、解析モデルをSimSolidに引き継げたと思います。
SimSolid単体版でしかできない境界条件等を設定をした場合、
モデルを修正したものを再度上記の手順から、別ファイルに出力する方法もありますが、再設定はすこし不便です。
その際はInapireのSimSolid Connectを利用します。
画面左上のファイル>拡張マネージャーからSimSolidConnectをオンにします。
image
オンにするとこのようなリボンが実装されます
image
OpenとExportのアイコンが追加されます。
OpenはSimSolidに直接モデルを送信します。ExportはSimSolidがインポートできるジオメトリ形式でモデルを出力します。



詳細はこちらをご確認ください。https://help.altair.com/ss/ja_jp/topics/simsolid/external_interface/external_interface_inspire_r.htm#reference_eb5_lfn_mqb