/MAT/LAW12 と /FAIL/HASHIN で作る破断ありの簡単な複合材料
初めに
この記事では、
- 材料は線形特性のみ
- 塑性は考慮しない
- 応力閾値で破断
- ソリッド要素 (厚肉シェル要素、積層厚肉シェル要素を含む) 向け
というシンプルな複合材料の設定方法をお伝えします。
材料特性 /MAT/LAW12 のシンプルな使い方
材料カード /MAT/LAW12 のリファレンスはこちらです。
https://help.altair.com/hwsolvers/rad/topics/solvers/rad/mat_law12_3d_comp_starter_r.htm
設定が必要な項目は、次の図で塗りつぶしたところです。黄色の塑性特性は、初期降伏応力です。線形材料なので、なぜ設定するのか不思議かもしれませんが、デフォルト値に 0.0 が指定されており、そのままだと、解析と同時に塑性領域に入ってしまうため、1e30 MPa などといった、絶対に到達できない応力値を入力しておく必要があります。
(クリックで拡大します)
記号 | 意味 |
E11, E22, E33 | 縦弾性係数 |
ν12, ν23, ν31 | ポアソン比 (*1) |
G12, G23, G31 | 横弾性係数 |
σ類 | 初期降伏応力。本記事ではすべて 1e30 とする |
*1) ポアソン比は添付数字の順番が重要です。例えば ν12 と ν21 は異なります。間違えやすいので、よくよく確認してください。
本記事最後に例題として 1要素モデルを載せておきますが、そこでは、このようにしています。単方向の長繊維による複合材をイメージしています。
#---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----| ##HWCOLOR materials 1 11 /MAT/LAW12/1 mat_law12 # MAT_RHO 1.40000000000000E-09 # MAT_EA MAT_EB MAT_EC 62500.0 7050.0 7050.0 # MAT_PRAB MAT_PRBC MAT_PRCA 0.29 0.418 0.0327 # MAT_GAB MAT_GBC MAT_GCA 2380.0 2000.0 2380.0 # sigma_t1 sigma_t2 sigma_t3 delta # MAT_BETA n fmax Wpref # sigma_1yt sigma_2yt sigma_1yc sigma_2yc 1.00000000000000E+301.00000000000000E+301.00000000000000E+301.00000000000000E+30 # sigma_12yt sigma_12yc sigma_23yt sigma_23yc 1.00000000000000E+301.00000000000000E+301.00000000000000E+301.00000000000000E+30 # sigma_3yt sigma_3yc sigma_13yt sigma_13yc 1.00000000000000E+301.00000000000000E+301.00000000000000E+301.00000000000000E+30 # alpha Ef c EPS_RATE_0 ICC #---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----|
破断特性 /FAIL/HASHIN のシンプルな使い方
リファレンスはこちらです。
設定する必要がある項目はこちらです。
(クリックで拡大します)
項目 | 説明 |
mat_ID | 先ほどの /MAT/LAW12 の ID を指定します。材料に破断特性を追加するというイメージです。 |
Iform | 1: 単方向長繊維向け、2: 織物向け |
σt_1, σc_2 等 | 応力破断基準値です。上の添え字 t, c は引張と圧縮を示します。下の 1,2,3 は材料方向を示します。 なお σc_33 がありませんが、σc_22 がその役割を担います。詳しくは後ほど説明します。 |
σm_12 等 | それぞれの方向のせん断方向の応力破断基準値です |
τmax | 破断基準に達してから、実際にモデルから要素を削除するまでの猶予時間です。 |
Iform=1 単方向長繊維向けを選んだ場合、5個の破断モードを評価します。
評価1: 繊維の引張: σt_1 そのものでの評価です。
評価2: 繊維の圧縮: 横方向の応力状態に応じて、繊維の座屈のしやすさが変わるという考え方のもと、このような補正項が入るそうです。(すみませんが Hashin 破断則の考え方や成り立ちをきっちりと理解しているわけではありません)。
評価3: 静水圧評価: 本記事の設定では、実質的には評価は行われません。
評価4: マトリクスの破壊モード: 繊維に対して横方向の応力とせん断応力を用いた複合的な破壊モードになっています。主にプライ面内に対する評価となっています。
評価5: 剥離モード: 評価4 と似ていますが、こちらは厚み方向を主体とした評価です
Iform=2 織物タイプを選んだ場合です。
評価1,2: 織物繊維の引張の評価
評価3,4: 織物繊維の圧縮の評価: こちらも単方向長繊維の評価2 同様に、繊維の座屈のしやすさに関する補正項が入っています。
評価5: 静水圧評価: 本記事の設定方法では、無効な評価となります。
評価6,7: マトリクスのせん断評価: 評価6 は面内のせん断評価で、評価7 は面台の評価となります。面がいは圧縮も含めた複合的な評価となります。
後ほど添付する 1要素モデルでは、単一方向の長繊維をイメージして、次のように指定しています。
破断までの猶予時間となるτmax ですが、デフォルト値が 1e20 となり、このままだと計算中の破断に至らないため、計算中に破断できるように短い時間を指定する必要があります。
後ほど添付する一要素モデルでは、長繊維をイメージして、次の設定としています。
#---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----| ##HWCOLOR failures 1 10 ##HMNAME FAIL_MODEL fail_hashin 10 /FAIL/HASHIN/1 # IFORM IFAIL_SH IFAIL_SO RATIO I_DAM IMOD I_FRWAVE EPSP_MIN 1 # SIGMA_1T SIGMA_2T SIGMA_3T SIGMA_1C SIGMA_2C 900.0 50.0 50.0 900.0 50.0 # SIGMA_C SIGMA_12F SIGMA_12M SIGMA_23M SIGMA_13M 50.0 50.0 50.0 # PHI SDEL TMAX EPSP_REF TCUT 1.00000000000000E-06 #---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----|
1要素例題モデル
厚肉シェル要素に 0, 45, -45, 90度の 4層を積層したものに対して、引張試験を行い、破断させます。下のアニメーションで要素が消えているのがわかります。
(変形倍率 20倍にしています)
ログ _0001.out には、破断の時刻や、破断モード、何層目かといった情報が出てきます。今回は 4層目 (45度のプライ) に モード 4、面内のマトリクス破断モードが出ています。σ22 が約 50MPa とほぼ設定値なので、この影響ということがわかります。
DELETE SOLID ELEMENT # 2 Failed layer # 4 HASHIN mode # 4 AT TIME # 7.1038E-03 RESPONSIBLE STRESS: SIG_11= -3.7435E+01 SIG_22= 4.9909E+01 SIG_33= 3.0161E+00 RESPONSIBLE STRESS: SIG_12= -3.0231E+00 SIG_13= -1.9173E-15 SIG_23= -1.3796E-14
本モデルのダウンロードはこちらです。
また、モデルの説明などは動画で行っています。本記事で説明した /MAT/LAW12, /FAIL/HASHIN 以外の部分も説明しています。
動画ファイル mp4 のダウンロードはこちら