始めに
シミュレーションをしているとソリッド要素が異常に潰れてしまうことはままあります。下図は 1個のヘキサ要素です。
いくつか原因は考えられますが、一番単純な原因は、そもそもそこまで潰れた時の材料特性が、正しく与えられていないことです。
となると、正しい材料を与えることが、一番の解決策ではないか、と考えられるのですが、問題はそんなに簡単ではありません。なぜなら、私たちは正しい材料特性など、観測することができないからです。
こちらの二つの記事は、引張試験で発生するくびれを題材としています。私たちは材料試験などと呼んでいますが、実際には、材料試験片の形がある程度保っている間の、材料試験片の特性を観測しているだけで、実はそこから材料特性を勝手に想像し、そして創造しているのです。
https://blog.altairjp.co.jp/yomoyama27/
本当につぶれ切ったり、ちぎれたりしたときに、それぞれの場所でおきている材料特性を観測できないのです。
ということで、前置きが長くなりましたが、真の材料特性を入れることができないなら、何か、つぶれ、ひずみを防止するテクニックは無いのか、というところになるのですが、バージョン 2025.1 から /PROP/SOLID に Icontrol = 1 というオプションが入っています。本記事ではこれを使った例題を示します。
Icontrol=1 の説明
場所はここです。
効果は、
- 高速な節点移動に対して粘性を与える
- ソリッド内面で自己接触する
- より強力にアワーグラスモードを抑える
となっています。
例題
Icontrol 不使用の例題:
Icontrol=1 の例題:
このような 1ヘキサモデルで、1点だけを押し込みます。
そして効果を分かりやすく見るために、応力 1MPa で降伏して頭打ちとなる意地悪な材料を用意しました。ヘキサが 10mm 角、力が 220 N なので、ざっくり 2.2 MPa 換算ですので、全く耐えられないはずです。
こちらが 2個のモデルの変形アニメーションです。右が Icontrol=1 です。異常な変形をうまく抑えていることがうかがえます。