始めに
こちらの記事では
TN が厚さ方向の最大応力、TT が横手方向の最大応力、という説明を行いました。
ただし、実際には、TN にも TT にも未達なのに、応力が低下していてしまうことがあります。
どうしてそれが起きるのかを示すのが本例題です。
例題
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1x1x1mm のヘキサ要素モデルです。この材料は、要素長に材料特性が依存するのでややこしいのですが、これ例題ではややこしい部分を考えなくて良いように、単位長さ 1mm を要素サイズとしています。
このように、厚み方向にも横手方向にも 1mm ずつ伸ばす条件です。
ヤング率/長さである EN=ET=1.0MPa/mm で、最大応力 TN=TT=1.0MPa ですので、双方に 1mm ずつ伸ばしたなら、ちょうど厚み方向の応力も、横手方向の応力も 1.0 MPa まで行きそうですが、どうなるでしょうか?
こちらが、拘束している剛体に掛かる荷重を見たものです。面積 1mm^2 なので、そのまま応力の数値にもなります。両方とも 0.7MPa をわずかに超えたあたりで、ダメージが始まって応力が下がっています。
なぜこうなるのかというと、実はダメージは、厚み方向と横手方向それぞれ独立で計算するのではなく、合算で計算しているのです。
ここに書いてある式がそうなのですが、ややこしいので、もう少し簡単に説明します。この材料は、変位と応力が一対一の関係ですし、基準値を応力で記入してますので、ここでは応力で説明してみます。分かりやすさ優先でかなり適当に処理していますので、厳密に元の式と違う部分があるなどはご容赦願います。
https://help.altair.com/hwsolvers/ja_jp/rad/topics/solvers/rad/mat_law117_starter_r.htm
厚み方向の応力を σN, 横手方向を σT と書くことにします。このとき、ダメージ D の計算としては、こんな感じになっているわけです。
つまりそれぞれの方向での応力が 1/√2 (=0.7 を少し超えたところ) でダメージ D=1 という判定になり、応力低下が始まったわけです。
他にも1要素モデルではなく、実際に挟み込んで使ってみた例もあるので、参考にしてください。