始めに
一般的な物理では、物体を滑らそうとしても、摩擦よりも力が小さい場合は、物体は全く滑らず、摩擦よりも大きくなると、滑る、そういうものとして扱われていると思います。
しかし、Radioss (*1) は、接触をペナルティ法、要するに、目に見えないばねで表現します。ばねなので、次のように、ある程度ずれてばねが伸びないと、十分な摩擦力が発生しない、という挙動になります。
本記事では、簡単な例題を使って、この挙動を確認していきます。
*1) 接触をペナルティ法で模擬するソルバーはどれも同じではないかと思います。
例題
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2要素のモデルです。図に書いていない自由度は全て拘束してあり、パートも剛体化しています。単純に接触だけの問題としています。
接触は /INTER/TYPE25 で摩擦係数 Fric = 0.3 としています。
このような動きをします。
/TH/RBODY で剛体力を出しているので、接触による垂直方向の力 Fz と、摩擦による横方向の力 Fx の時間履歴を見てみます。Fx が Fz の 0.3倍で、摩擦係数通りに、Fx=μFz に最終的にはなるのですが、
はじめに述べたように、残念ながら、動き始めた瞬間から μFz は出てくれません。
横軸を、変位量(土台側が完全拘束なので、相対的なすべり量と等しい) に変えてみます。
いきなり μFz 出ることはできず、0.15mm ほどずれたところで、μFz に到達しました。
まとめ
- あくまでも、ばね
- 摩擦力が μFz に到達するまでは、少し伸びる必要がある
- 摩擦で完全に止めることはできない
利用目的によっては、このあたりをきちっと認識しておく必要があるかもしれません。