材料座標系を決めるための座標系は、要素に材料座標系を定義するときにのみ使われます。
はじめみ
/PROP/TYPE9 などの異方性要素特性では、座標系 /SKEW を使って、材料方向を定義できます。
「計算開始後もずっと /SKEW の向きに更新されるのですか?(物体が回転しても材料座標系は回転しないのですか?)」という質問をいただいたことがあるのですが、計算初期化で要素に材料座標系を定義するときにのみ使わるのであって、計算開始後の材料座標系には影響しません。計算開始後は、要素の回転に伴って、材料座標系も回転します。
本記事では、それを示す一例を提示します。
例
例として、このようなシェル 1要素のモデルを用意しました。10mm角で厚さは 1mm です。/SKEW/FIX というのは空間に固定の座標系です。
異方性シェル要素特性は /PROP/SH_ORTH (TYPE9) です。上の図の /SKEW を指定しています。
そして、異方性材料 /MAT/FABRI (LAW19) は次のようにしました。E11 と E22 で剛性を大きく変えています。
ちなみに /PROP/TYPE9 と /MAT/FABRI は布を表現するのにぴったりな機能です。それについてはこちらの記事に詳細を書いております。
そして、次のような拘束条件と力を与えました。つまり、時計回りに 90 度くるんと回ったあと、横に引っ張られる形になります。力は 100N です。
応力は 100N/10mm/1mm = 10MPa です。もし要素の回転とともに材料座標系も回転しているなら、呼応するのは E11=10000MPa ですので、ほとんど伸びません。しかし、もし /SKEW/FIX で材料座標系が常時更新されているなら、対応するのは E22=100MPa ですので 10% の伸びなので、見た目にもわかるはずです。
では答え合わせです。
このように、ちゃんと材料座標系が追従していることが分かります。
今回は /SKEW を使った材料座標系指定方法を説明しましたが、どの方法を用いても初期化にしか使われないというのは同じです。もう少し言うと、カードのフォーマットルールこそ違いますが、OptiStruct でも、初期化にしか使われない、というのは全く同じです。
この例で用いたモデルはこちらです。気になるなら確かめてみてください。