電波伝搬シミュレーション結果を利用した基地局配置最適化
電波伝搬シミュレーション結果を利用した基地局配置最適化
Altair Fekoを利用すると、基地局からの電波の広がりを簡単に求めることができます。それぞれの基地局からの電波の広がりが求まったところで気になるのが、どの組合せが一番効率よく電波のカバーエリアを広げることができるか?という問題です。例えば下図をご覧ください。今回はオフィスフロアを例に考えてみます。黒い線はオフィスのパーティションとお考え下さい。一番外側の灰色の少し厚みのある線が建物の外壁を表しています。この図のように25箇所の電波源の候補地(青色のマーク)からどのように選択にすればカバーエリアが所望の割合を超えるかどうか?ということを検討してみるとします。
前提条件
カバーエリアを考えるとき、実際の基地局では他局からの干渉などが問題となりますが、今回は話を簡単にするために他局からの干渉については考慮せず、下記のように電波強度が指定の値を超えた領域の割合として考えます。
- 各地点での電波強度はその地点において最も電波強度が強かった基地局からの値を採用する。
- カバーエリアは上記により決まった各地点での電波強度の値が設定する値以上となる割合とする。
組合せの検討
25の候補からxコの組み合わせをとる場合をExcelを使って計算してみます。Excelでは組合せの関数を持っていて、COMBIN(25,x)で計算ができるようです。xを1~25まで変化させて組合せの数がどのようになるかをグラフにすると下図のようになりました。
ちょうど25の半分くらいの数を選ぶときに最も組合せの数が多くなり、500万通り以上となります。そして、この基地局の数1~25で足し合わせると、33554431通りとなり、たった25局から選ぶだけなのにすごい数の検討が必要となることがわかります。仮に1つの組み合わせを検討が1秒で終わったとしても、33554431秒~388日となり、1年以上計算し続ける必要がありそうです。
しかし、現実的に考えるとすべての組み合わせを検討する必要はなさそうで、基地局の数を1から徐々に増やしていき、所望のカバーエリアに達した段階で終了すれば良さそうです。
基地局一基で最も広い範囲をカバーできる位置
まずは、基地局一基で最も広い範囲をカバーできる位置を探してみます。早速結果をご覧いただくと下図のようになります。カラーの図は上位9つの結果を示していて、赤ほど電波が強いことを表しています。電波源は白い星マークで表しています。下の折れ線グラフは1位から9位までのカバーエリアの割合を表しています。
基地局一基のカバー範囲はおよそ70%が上限のようです。
基地局二基で最も広い範囲をカバーできる位置の組み合わせ
続いて基地局二基を利用した場合の結果を示します。カバー範囲はおよそ85%にまで到達しました。
基地局三基で最も広い範囲をカバーできる位置の組み合わせ
続いて基地局三基を利用した場合の結果を示します。カバー範囲はおよそ94%にまで到達しました。
基地局四基で最も広い範囲をカバーできる位置の組み合わせ
続いて基地局四基を利用した場合の結果を示します。カバー範囲はおよそ97.5%にまで到達しました。
基地局五基で最も広い範囲をカバーできる位置の組み合わせ
続いて基地局五基を利用した場合の結果を示します。カバー範囲はおよそ99.7%にまで到達しました。計算に四時間ほどかかりました。
HyperStudyを利用した最適配置の探索
上記の通り、総当たり的な探索を実施すると、利用する基地局数が候補の数の半分に近づくにつれて、計算に要する時間が多くなることが確認できます。25コから5コ選ぶ組合せですら四時間かかってしまったので、これ以上の基地局数の利用を検討するのは現実的ではない気がします。
そこで、最適化ツールであるAltair HyperStudyを利用して、基地局の最適配置を検討することにしました。
HyperStudyでは、設計変数として各候補の場所での電波のON, OFFを設定し、目的関数としてカバーエリアの割合の最大化と基地局の数の最小化を設定するだけで簡単に多目的最適化が実施できます。その結果下図のようなパレートフロントを得ることができます。このグラフは横軸に基地局数、縦軸にその基地局数での最適配置で得られるカバーエリアの割合です。およそ基地局を六基利用することでカバーエリアの割合をほぼ100%にできる事がグラフからすぐにわかります。また、この結果を得るために要した時間は20分程度です。総当たり的な方法よりもだいぶ時間を短縮できています。
まとめ
電磁界および電波伝搬のシミュレーションツールであるAltair Fekoと最適化ツールであるAltair HyperStudyを組み合わせて利用することで、無線基地局の最適配置検討を簡単に、短時間に実現することができました。これらのツールを利用して、弊社では下記のような取り組みにも参加をしております。
ローカル5G電波シミュレーションを活かした基地局配置計画 | Use Case | PLATEAU [プラトー] (mlit.go.jp)
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