ソルバーフリー、エクセルを使った簡単・高速な線形荷重の同定方法
始めに
実験に合うように荷重を同定しようと考える場合、HyperStudy でぴったり合うように荷重の値変えて、解析ソルバーを流して最適化する、というのがぱっと思いつくことだと思います。しかし、対象が線形静解析である場合、線形静解析の特徴をうまく使うことで、もっと手軽に高速に合わせこみができます。この方法は、線形静解析が実行できるソルバーであれば、どのソルバーにも対応します。
線形静解析の原理
1つめの原理ですが、線形静解析では、入力と結果は掛け算の関係があります。このような荷重 F1 とひずみ ε の関係があるとします。F1=1 の時のひずみを ε(F1=1) といった具合に表現するとします。
すると、F1=10 のときのひずみはどうなるかというと、次の関係となります。
ε(F1=10) = 10 ε(F1=1)
2個目の原理は、線形静解析では入力と結果は足し算だということです。次のように荷重 F1 と F2 に対してひずみ ε という関係がある場合、F1=1 かつ F2=1 の時のひずみを ε(F1=1, F2=1) と書くとします。
すると F1=1 かつ F2=1 のときのひずみには、このような関係式が成り立ちます。
ε(F1=1, F2=1) = ε(F1=1, F2=0) + ε(F1=0, F2=1)
最後の原理としては、先の二つの原理は同時に成り立つということです。たとえば F1=10, F2=5 の時のひずみは、次のように書くことができます。
ε(F1=10, F2=5) = 10 ε(F1=1, F2=0) + 5 ε(F1=0, F2=1)
結局のところ、必要な荷重ごとに 1 を与えた解析を一度行っておけば、どのような荷重でもエクセルや HyperView で再現できるということです。この仕組みをうまく使えば、エクセルを使って、簡単に入力荷重の同定が可能です。
実例
実際に次のモデルを使って、同定を行ってみます。ひずみは x 方向の、画像の上面のひずみを測定します。
まず F1~F4 に力 1だけ与えた解析を OptiStruct で実施します。F1 ~ F4 に対応したサブケースが 4個あります。
どのサブケースでも、節点には荷重 1 を入れています(節点が 2個あるため、実際は 2 です)。
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解析結果から次の表を作ります。B-E 列が 入力 1 に対するひずみで、F-I 列が F1=A1,,, F4=A4 ということを示しています。B 列 x F 列 が荷重 F1=a1 に対するひずみ、E 列 x I 列が F4=a4 に対するひずみとなります。これらの合計が J 列で、これが計算上求められたひずみということになります。
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L 行の誤差は (計算したひずみ_J列 - 実測ひずみ_K列)^2 とし、全部足したものを誤差総和としています。最適化ではこれを最小化します。誤差については、絶対値が良いとか、大きさで割って正規化した方が良いとか、皆さまの考えに沿って変えてください。
HyperStudy の最適化は、次のように設計変数と目的関数を指定します。
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HyperStudy で GRSM という手法で最適化すると F1(=a1)=-80, F2(=a2)=20, F3(=a3)=100, F4(=a4)=-30 となります。
(今回は都合上 CAE の結果に対して合わせこみを行ってるのでぴったり合いますが、実験値に対して行えば、もう少し誤差は残ると思います。)
それでは念のため、実際に同じ荷重の OptiStruct モデルを作って解析を行います。
結果は、このように完全に一致しており、合わせこみもできているし、線形解析の原則が正しいこともわかりました。
この実例で使ったファイル一式はこちらです。
また、実際に操作しているところを動画で説明してますので、詳しく知りたい方は動画をご覧ください。
動画による説明
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