パラメトリックバケットモデルの作成方法
本記事では、パラメトリックバケットモデルの作成方法を示します。
Altair Inspireのパラメトリック機能で定義したバケットモデルは下記動画のように簡単に形状を変更できます。
粉体・バルク材挙動シミュレーションのAltair EDEMや機構解析Altair MotionSolveと組み合わせたパワーショベルによる土砂の掘削シミュレーションにて、様々なバケットでの性能を比較、検討できます。
本記事で作成したバケットモデルは下記よりダウンロードいただけます。
パラメトリック定義
本記事では、下記の論文を参考にパラメトリックのバケットモデルを作成します。
上記論文の図5を参考とします。
バケット前後長さ:R
フロント壁長さ:l1
ボトム円弧長さ:l2
リア壁長さ:l3
カットアングル:beta
バックアングル:gamma
バケット幅:W
として作成します。
ベースCAD(アタッチメント)のインポート
attachment.x_bをドラッグアンドドロップします。
アームへのアタッチメント部位のCADが読み込まれます。
スケッチの作成
Global Y面を表示し、Sketch -> New Sketchを選択します。Global Y面を選択し、Global Y面にスケッチを作成します。
アタッチメントの上側のホールが原点(0,0)となっています。
Polylineを選択し、頂点をクリックすると下記のように2直線が作成されます。現時点では、寸法を気にする必要はありません。
水平、垂直のみ意識して頂点を選択してください。
shiftキーを押すと、円弧モードに切り替わります。開始点の接線を保持するように次の頂点を選択します。
再度shiftキーを押すと直線モードに戻ります。開始点の接線方向を保つように次の頂点を選択します。ここで、線は閉じている必要はありません。
始めの頂点を選択して線を閉じると、開始点の接線が保たれませんので、開始点の接線を保つことを優先させます。
右クリックでPolylineの作成を完了し、最後の頂点をドラッグで最初の頂点位置に移動させます。
線が閉じて、面が定義されます。円弧は両側とも接線を保持していることに注意してください。
設計変数の作成
Variable Managerにて設計変数を定義します。
R, length, 1800 mm (バケット前後長さ)
beta, angle, 33 deg (カットアングル)
l1, length, 1200 mm (フロント壁長さ)
r, length, 570 mm (ボトム円弧半径)
W, length, 1800 mm (バケット幅)
を作成しました。文献では、ボトム円弧長さ:l2、リア壁長さ:l3およびバックアングル:gammaが定義されていましたが、本モデルではボトムの円弧半径:rを使用します。l2、l3、gammaは接線条件などから従属的に決定されます。
寸法の設定
Dimensionを用いて、バケット後端上部の点の原点からの距離を設定します。これで、バケット後端上部の点が固定されます。
続いて、バケット前後長さを定義し、値を設計変数のRとします。
次にカットアングルを定義します。まずは、Lineで鉛直に補助線を入れます。
Line作成を右クリックで終了し、作成した線を右クリックし、Constructionにチェックを入れると、点線に変わります。これで補助線となります。
Dimensionでカットアングルの角度を定義し、値を設計変数のbetaとします。
Dimensionでフロント壁長さを定義し値を設計変数のl1とします。
Dimensionでボトム円弧の半径を定義し値を設計変数のrとします。
以上を定義すると線が青から黒に変わり、位置が確定したことを示します。l2, l3, gammaの値は従属的に決定されます。右クリックでスケッチを終了します。
押し出しによるバケット形状作成
GeometryのExtrudeによりスケッチで作成した面を押し出して、ソリッドを作成します。Symmetryとして左右対称に押し出します。
長さは片側の長さで定義されるため、設計変数のWを用いてW/2とします。
厚みの作成
Partitionで全面、下面、後面を選択し、実行します。値を-50mmとして実行すると、外側に50mmオフセットしたソリッドが作成されます。
同様に側面も外側に50mmオフセットさせたソリッドを作成します。
中のソリッドを削除します。
BooleanのCombineで外側に押し出したソリッドを1つのパートにまとめます。
パートの名前を整理します。
爪(ツース)のインポート
爪(ツース)の移動、回転用に設計変数を追加します。
tooth_rotでbetaの変更に合わせてツースを回転させる量を定義します。
tooth_wでWの変更に合わせてツースを幅方向に移動させる量を定義します。
teeth.x_bをドラッグアンドドロップでインポートします。
ツースはバケット後端位置基準で配置されています。
バケットの前後長さRに対応してツースを移動させます。
linear patternを使用します。前後方向のエッジに沿って、設計変数Rの距離にコピーします。
コピー数は元のCADを含め2とします。
バケットのカットアングルbetaに対応してツースを回転させます。
Circular patternを使用します。前側のエッジに沿って、設計変数tooth_rotの角度にコピーします。
コピー数は元のCADを含め2とします。
設計変数betaの値を変更し、ツースの角度が追従するか確認します。
反対向きに回転する場合は、回転軸の取り方が反対のケースがあります。tooth_rotの式の符号を変えて対処してください。
再度linear patternで幅方向にコピーします。
Bothとし、symmetryにチェックを入れます。
回転させたツースをバケットの前側のエッジに沿ってコピーします。
移動量は設計変数のtooth_wとし、コピー数は3とします。自身+2個のコピーが作成されます。
コピー前のツース2個を削除します。
パートの名前や階層を整理します。
betaの角度を33°に戻し完成です。
設計変数変更によるバケットの形状変更
設計変数を変えることで、即座にバケット形状が変更されることが確認できます。
使用ソフト