日本の気象レーダーのカバー範囲をシミュレーションで確認してみましょう!
Yamakura
Altair Employee
日本の気象庁では空にレーダーを発射して、反射してきた電波の強度などから日本上空の雨のようすを公開しています。
気象庁 | ナウキャスト(雨雲の動き・雷・竜巻) (jma.go.jp)
この記事では気象庁の気象レーダーのカバー範囲をシミュレーションによって求め、下図のように実際の範囲と比較してみようと思います。
前提条件:Altair FekoのWRAPというソフトを利用します。レーダーの座標値などは、気象庁 | 気象レーダー (jma.go.jp) から取得しました。
WRAPでのシミュレーション実行方法
- WRAPはAltair Fekoのランチャーから起動します。
- 今回はGuestユーザーで利用してみます。ユーザーごとにアクセスできる情報を管理することができます。
- Windowメニューから、New Mapを選択します。
- 開いたMap WindowのSettingsメニューのMap Contents...を選択します。
- Vector Dataタブで、IDWMを選択し、Rastar Dataタブで、Relief, gray scaleなどを選択し、地図を表示させます。
他にも表示可能な項目があるので興味がある場合はいろいろ試してみると面白いと思います。
標高データが陰影で表現されます。 - 地図上で、レーダーを配置したい大体の位置で右クリックし、New Station and Tx Position...をクリックします。
レーダーのステーションのテンプレート一覧が表示されますので、フィルターで周波数を指定して探してみます。
だいぶ絞られますので、今回は一番上に表示された、Wrap Earth station 6G/1Mというのを選択してみます。
ステーションの編集画面が表示されますので、ここで緯度経度、アンテナの対地高度や、利用する周波数などを指定します。
設定できる項目は別のタブにもあるので、いろいろ見てみると設定項目が確認できるかと思います。
OKをクリックすると、地図上にステーションのアイコンが表示されます。 - プロジェクトウィンドウに戻り、左側のツリー内の、This Project > Stations in Projectに先ほど作成したステーションが現れます。
- 同様の手順を繰り返すことで、ステーションを配置していきます。作成したステーションでカバレッジエリアを計算したいものを複数選択して、Tools > Coverage...を選択します。
現れるウインドウで、
Single station calculationsにチェックを入れ、Calculationで計算したい項目(電界強度なのか、電力なのかなど)を選択し、
エリアでは各ステーションの周り600kmほどを計算対象領域としました。
また、気象レーダーでは上空2000mあたりの雨粒からの反射を見るようですので、評価する地上からの高さを2000mに設定しました。
OKをクリックすると計算が実行されます。
ステーションの計算が完了すると下図のように、Results > Coverage Results > Coverage Results Areaに結果が表示されていきます。 - 複数のステーションを選択して右クリックし、Composite > Best-caseをクリックすると、各ステーションから放射された電力のうち最も強い値で結果が結合されます。
下図のように気象レーダーのカバー範囲が表示されます。気象庁のウェブサイトの範囲と比較してもよく一致していることがわかります。
シミュレーションなので、到達する電波強度も簡単にわかります。
また、これらのシミュレーションではそれぞれの空域に到達する電波はどこのステーションが一番強く電波が届くかなどを見ることも可能です。
また、いくつのステーションからの電波が届いているかという表示も可能です。
指定した地点でのステーションからのスペクトルも算出することができ、干渉の可能性などについて検討する周波数管理にも利用することができます。
WRAPでシミュレーションをすることで、レーダーのステーション配置の最適化や周波数割り当ての最適化など様々な活用ができそうです。
今回、この記事で実施したシミュレーションも1つのステーションで30秒程度で計算は完了します。
また、操作性についても非常に直感的で使いやすく、どなたでも簡単にご利用いただけると思います。
以上となります。
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