テニスラケットの定理をMotionSolveで再現してみよう
Overview
まずはこちらの動画をご覧ください。無重力化でT字ハンドルを回転させたときの動画です。向きが瞬間的に入れ替わり非常に不思議な動きをしています。タイトルにも付けましたがテニスラケットの定理・中間軸の定理・ジャニベコフ効果などと呼ばれるようです。
Plasma Ben様の動画参照させていただきました。
今回、Altairの機構解析ソフトMotionSolveを用いて、この動きが再現可能かをトライしました。
多少の試行錯誤の結果、Altair MotionSolveを用いて、下記Try2のように無事再現することができました。
では、以下、どのように再現したかを紹介していきます。
Pre-Requisite
本動画で作成したモデルはこちらよりダウンロードいただけます。
Usage/Installation Instructions
モデリング
プリのAltair MotionViewを用いて、動画を見ながら以下のようにモデリングしました。
X軸まわりに初期角速度100piを与えて回転させます。また、外乱としてZ軸まわりに0.01piの初期角速度を与えました。X軸まわりの角速度の1/10000の値です。
計算結果 Try1
計算してみたところ、X軸まわりに安定して回転を続けるのみで、残念ながら動画のような向きが入れ替わる現象を再現しません。
モデル修正
そこで、再度動画をよく見てみたところ、Z軸のシリンダが太いことに気が付きました。そこでモデルを以下のようにΦ10mmからΦ20mmに変更しました。
計算結果 Try2
再度計算してみたところ、無事に向きが入れ替わる現象を再現できました。
考察
原理自体はwebで検索すれば出てきます。たとえばこちら。
Tennis racket theorem - Wikipedia
剛体には主慣性モーメントが3つあるのですが、運動方程式の符号を確認すると、最大、最小主軸まわりの回転は安定で、中間主軸まわりの回転は不安定になるということがわかります。
では、なぜTry1では再現せず、Try2で再現できたかを見てみましょう。
それぞれのモデルの慣性モーメントを示します。
Try1
Try2
今回はX軸まわりに高速回転させていますので、X軸まわりが中間主軸がどうかというのが重要になります。
Try1ではX軸まわりの慣性モーメントが1683 kg mm2で最小ですので、最小主軸まわりの回転であることがわかります。これは安定条件ですので、Z軸まわりに外乱を与えても元の位置に戻ろうとするため、向きが反転するような現象はおきません。
一方Try2ではZ軸に沿ったシリンダを太くすることで、X軸まわりの慣性モーメント6807 kg mm2がZ軸まわりの慣性モーメント6004 kg mm2より大きくなり、X軸まわりが中間主軸まわりの回転にかわったことがわかります。これは不安定条件ですので、Z軸まわりに外乱を与えると、元の位置から乖離する方向に運動します。結果、向きが反転する現象を再現します。
Post-Requisite
使用製品:Altair MotionSolve/MotionView
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