人工知能(AI)は現代制御理論と手を取り合えるのか?
本記事はLivio Marianoによる投稿
When Artificial Intelligence (AI) shakes hands with Modern Control Theory
を和訳したものです。
概要
この記事では、新しい AI ベースのアプリケーションromAIを紹介します。romAIによりデータからリアルタイムシミュレーションに準拠した動的モデルを生成することができます。この革新的な技術により、設計者が方程式を立てたり、寸法測定を行うことなく、たった110秒間のデータ取得のみで、最適なコントローラが設計できることを実際のキットを使用して実証します。
はじめに
現代制御理論は、動的システムの状態空間表現に基づいた理論です。これは、物理システムを記述する数学的な定式化の知識を活用して、コントローラをより良く設計し、所望の性能に到達することを可能にする一連の技術を表しています。
具体的に見ていきます。
数学的に言えば、動的システムは、その出力(ベクトルy)が入力(ベクトルu)とその状態量(ベクトルx)、および一連の特性パラメータΘによって依存するシステムです。
システムの状態空間表現は、時間領域において、連立一次微分方程式を通して多入力多出力(MIMO)システムを表す便利な方法です。
動的システムが線形である場合、または非線形システムを線形化した場合、状態空間の定式化はマトリクス形式で記述することができるので、A、B、C、Dをそれぞれ状態量、入力、出力、およびフィードフォワードマトリクスとすることができます。
最適な制御技術は、現代制御理論の戦略に属するものの1つであり、状態マトリクスA、B、C、Dを使用した動的システムの線形(または線形化した)定式化に基づいています。状態マトリクスによって作られたシステムの数値モデルがシステムの実際の動作に近いほど設計された制御がより良くなることは明らかです。
要約すると、現代制御理論を用いて最適なコントローラを設計するには、システムの基礎となる数学的な定式化が必要ということになります。
チャレンジ
しかし、以下のような理由で数学的な定式化が利用できない場合はどうなるでしょうか?
- システムが複雑すぎる
- この問題に関する専門知識の不足
- 定式化に割く時間が限られている
- ...
AIは、私たちの知識不足をカバーし、方程式の手がかりを持たず、測定を行わないなか、数回の実験から始めるだけで、高度な制御技術を採用することができるのでしょうか?
romAIアプリケーション
Altairは斬新なアプリケーション romAIを開発しました。
このアプリケーションは、AIとシステムモデリング技術を組み合わせて、データから再利用可能な連続的な動的モデルを非常に効率よく生成します。これらのモデルは、システム設計や最適化分析を高速化するための縮約モデルとして、また、今回の課題のようなリアルタイム・制御アプリケーションにおけるデジタルツインの基盤として使用することができます。
このツールは主に次の構成で構成されています。
- Altair Activate®で利用可能なromAIの生成に使用されるGUI
- 生成されたromAI をAltair Activate®で利用可能とするブロック
romAIブロックは、Altair Activate®で直接使用することができるほか、FMUやdllにエクスポートしてサードパーティソフト上で使用することもできます。
ボールバランシングテーブル (BBT)
AIによる最適制御設計を実証するため、今回はACROME社のBBTを使用しました。
BBTは球が特定の軌道に従うようにテーブルの傾きを制御する装置です。
入力は、アームに接続された2つのサーボモーターの回転角で表され、ボールの動きに影響を与えるテーブルを傾けることができます。テーブルはタッチスクリーンで構成されており、そこに置かれたボールの位置に関する情報を取得することができます。
ワークフロー
3ステップのワークフローに従って進めます。
- データ生成
- システムの識別とコントローラの設計
- 検証
全部で5時間もかからずに達成できました!
データ生成
必要なデータを生成するために特定の戦略を定義する必要はなく、2つのサーボを回転させてテーブル上のボールをランダムに動かすという操作を110秒間行いました。
本当にそれだけでよかったのでしょうか?
はい!わずか110 秒で私たちのニーズに十分なデータが取得できました!
システムの識別とコントローラの設計
その後、データをcsvファイルに保存し、romAIのGUIに読み込ませ、動的システムのモデルを作成しました。
romAIのモデルが生成されると、Altair Activate®内に組み込まれた線形化機能を利用して、自動的に状態マトリクスA、B、C、Dを取得します。
次に、制御ライブラリのlqr 関数を利用して、最適なコントローラを設計します。
検証
さあ、これでコントローラをテストする準備ができました。
8の字軌道と2つの斜めの軌道でテストしました。
設計されたコントローラは、目的の経路に沿ってボールを駆動することができました。
まとめ
- BBT上でボールをわずか110秒間ランダムに動かして得られたデータから、このシステムの適切なモデルが特定できました。これは重要なことです。なぜなら、常に最適な形で、長時間のデータが得られるとは限らないからです。
- 解析対象のシステムが不安定であることが、この課題をさらに困難なものにも関わらず、romAIは最適なコントローラのベースとなるモデルを特定することができました。
- トレーニングで使用していないデューティサイクルでも、設計されたコントローラは問題なく動作しています。
- 生成されたromAIは、設計者が生成時に定義した状態量のもと線形化することができ、A、B、C、D マトリクスを取得することができます。そして、制御ライブラリを活用することができます。これらはすべて、同じモデリングプラットフォームであるAltair Activate®で行うことができます。
- romAIは、以下のことを行わずに、高度な制御技術を採用することを可能にしました 。
- ボール半径、作動アーム長などの事前の測定
- 数式の構築
110秒間の実験で取得したデータから始めるだけです!
では、romAIがあなたの仕事にどのように役立つのか、コメントをお待ちしています!
romAIについての詳しい情報や、このアプリケーションがどのようにあなたのニーズを満たすことができるかについては、必要に応じてAltairまでお問い合わせください。