人工知能(AI)を活用した離散要素+マルチボディ連成シミュレーションの高速化
本記事はSpiros Foivos Malliosによる投稿
romAI: How to speed-up DEM simulations leveraging Artificial Intelligence
を和訳したものです。
概要
この記事では、新しい AI ベースのアプリケーション romAI を使用して、シミュレーションデータから動的な低次元化モデル(Reduced Order Model : ROM)を生成します。システムシミュレーションの例では、この革新的なアプローチが重機の設計をどのようにサポートできるかを実証します。romAIはホイールローダーモデルと組み合わせることで、バルク材料の相互作用による負荷を高精度に推定し、シミュレーションの実行時間を約1/35と大幅に削減します。
序論
このアプリケーションでは、バルク材料を取り扱うホイールローダーの解析について説明します。 このシステムはAltairのソフトウェアでシミュレートすることができます。 ホイールローダは、マルチボディソフトウェアのAltair MotionSolve®でモデル化でき、構造解析ソフトウェアAltair OptiStruct®で作成された弾性体ボディも使用できます。 PIDコントローラは、ブームとバケットのアクチュエータで使用され、所望の位置に動かすことができます。 最後に、バルク材料の挙動は離散要素法(DEM)ソルバーであるAltair EDEM®でシミュレートされます。
ホイールローダの異なるハンドリング操作により、バルク材料からバケットへの負荷、そして個々の部品への負荷が変わることが予想されます。例えば、油圧のアクチュエータ荷重やブームの応力です。
従来は、異なるハンドリング操作毎に、EDEMとの連成シミュレーションを実行する必要がありました。しかし、特に大規模な問題に関しては、EDEMは非常に計算時間がかかる可能性があります。
チャレンジ
これらの解析の目的の 1 つは、さまざまなハンドリング操作をテストし、重要なコンポーネントの応力と負荷を正確に推定することです。
人工知能(AI)は、DEMシステムを計算時間が短くかつ精度の高い低次元化モデルに置き換えることで、検討をスピードアップすることができるでしょうか?
ワークフロー
3 段階のワークフローに従います:
- データ生成
- ROMの生成と検証
- ROMの展開 / 結果評価
9時間以下で、これら全ワークフローの実行が可能です。
データの生成
romAIのトレーニングに必要なデータを生成するために、EDEMでのみ実行されるDEMシステムで5つの異なるシナリオを実行しました。各シナリオにおいて、バケットの前後X、上下Z変位とY軸回りの角度を、それぞれの速度とともに変化させ、適切な運動範囲をカバーしました。
ROMの生成と検証
その後、データを csv ファイルに保存し、動的な低次元化モデルの生成のために romAI のGUI にデータを供給しました。
システムへの入力は既に述べられる変位、角度、速度、角速度であり、出力はXとZ方向に沿った力と、Y軸の周りのトルクです。 動的システムの状態量として、バケットですくったバルク材料の質量を選択します。このバルク材の質量は出力としても使用できます。
次に、同じ入力条件を与えた場合の出力を EDEMと比較して、romAI モデルを検証します。
ROMの展開 / 結果評価
生成されたROMを検証したら、1DシミュレーションソフトウェアAltair Activate内にてromAIをホイールローダーモデルに接続し、連成シミュレーションを実行します。
最後に、比較の参照データ取得のため、同じハンドリング操縦でホイールローダーモデルとEDEMとの連成シミュレーションを実行します。
このような荷重シナリオでは、アクチュエータの適切なサイズを設定するために、必要なアクチュエータ荷重を推定することが重要です。以下は、これらの動きを実行した場合の油圧荷重の結果です。 最大荷重の差は1.4%に収まっています !
ホイールローダーの最も重要なコンポーネントの1つは、バケットからフレームと油圧アクチュエータに負荷を伝達するブームです。MotionSolveの弾性体ボディのモーダル解析アプローチを使用して、ブームの応力を計算し、疲労解析によりライフサイクルを計算することもできます。
驚くべきことに、EDEM連成モデルとromAI連成モデル間の応力集中部位の最大フォンミーゼス応力の違いは2%以下です。
結論
- 適切な動きの範囲をカバーした数回のEDEMシミュレーションによって得られたデータから適切な低次元化モデルが作成できました。
- DEM モデルの高い非線形性のため、一般的にモデルの低次元化は困難です。それにもかかわらず、romAIは重要なコンポーネントの応力と負荷を数%以下の差異で予測することができました。
- romAIは、シミュレーションの実行時間を680秒から20秒へと約35分の1に短縮しながら、トレーニングで使用されたものとは異なるハンドリング操作でも、バルク材料により生じる荷重を推定することができます。
AIを組み合わせたシステムシミュレーションの追加情報については、Altairにお問い合わせください。
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本ブログで使用したモデルはModel & Script LibraryとしてKnowledgeBaseからダウンロードいただけます。
https://community.altair.com/community/?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0119769
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