始めに
普段、主にシェル要素やソリッド要素を使っていても、何かちょっとしたものを、一から CAD で造形してシェルやソリッドメッシングをする代わりに、簡単な 1D の、はり要素(梁要素)で表現したくなる時はあると思います。
はりの力学や、はり要素は非常に長い歴史があるので、OptiStruct も多くの機能があり、非常にややこしいカードのルールがあったり、プリの HyperMesh にも覚えきれないほどの機能がありますが、そういったことは、必要になったときに知れば良いことなので、本記事では、はり要素利用の最初の一歩として、もっとも設定が簡単な、丸棒を表現してみます。
はり要素に関係するカードの説明
まず、はり要素は CBAR カードです。本記事で扱うのは緑の部分のみです。
左から
CBAR: そのままの文字列 "CBAR"
EID: はり要素の ID
PID: はり要素特性 PBARL の ID
GA, GB: はり要素を作る 2個の節点
X1, X2, X2: GA-GB に直角の方を向いたベクトル。直角はいい加減でよい。なんなら GA-GB から少しでもずれていれば OK。意味のあるベクトルなのですが、とりあえず本記事では、流します。
HyperMesh での作業だと、この緑の部分です。この図の場合 GA-GB が (1,0,0) を向いているので (0,1,0) とか (0,0,1) にしておけば良いです。
次は CBAR 要素が参照するはり要素特性 PBARL です。この例題で扱うのは緑部分のみです。
PBARL: そのままの文字列
PID: プロパティ ID
MID: 材料 ID。シェルやソリッドと同じ MAT1 を指定します。
TYPE: 断面の形状ですが、本記事は ROD 限定です。
DIM1: 断面形状によって複数の指定になったりしますが、TYPE=ROD の場合、半径のみの入力です。
(本例題においては、この先は読まなくて良いです。他の断面をうっかり見てしまい、断面に Y 軸や Z 軸が決まらないと、寸法を入力できないことに気が付いた方は CBARL の X1, X2, X3 ベクトルに戻ってみてください。実はそれがおおよそ Y 軸の向きを決めています)
以上を踏まえて、例題に進みましょう。
例題:
ダウンロード:
例題はこのような片持ち梁になっています。長さ 100mm で半径 1mm の丸棒です。材料は鉄でヤング率 E=210000MPa です。
CBAR 要素周りのカードはこのようになっています。
緑色が GA, GB ではり要素を作る節点です。全体座標の X 軸 (1,0,0) を向いています。青の X1,X2,X3 で別の軸を指定するので、本記事では全体の Z軸の方向 (0,0,1) としています。
黄色ではり要素特性 PBARL との関係を示し、TYPE=ROD で半径 1.0mm となっています。
紫が PBARL が参照する MAT1 で鉄の特性を入れています。
計算結果ですが、20.2mm の変形です。はりがたわまずに、根本からぽっきり折れているように見えるのはないのは、1要素しかないので、表示できていないだけです。
では検算してみます。
はりの力学では、片持ち梁の先端の変形量は
dZ = F L^3 / 3 E I
です。ここで F=10N, L=100mm, E=210000MPa です。I は断面二次モーメントで円断面の場合、半径を R=1 として
I = π (2R)^4 / 64 = 0.785 mm^4
です。
当てはめると
dZ = 20.2mm
です。同じ結果になっています。
また、念のため体積も検算してみます。
V = π R^2 L = 314mm^3
です。
ログファイル .out に出力されている体積と等しくなっているので、やはり大丈夫です。
ということで、狙い通りの設定になっています。
CBAR 作成動画
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