はじめに
こちらの記事では /INTER/TYPE25 などの摩擦に関するオプションの Ifric=3 で静摩擦、動摩擦を表現する例題を示しました。
Ifric=3 では、必要なパラメータは 6個でしたが Ifric=4 では 3個になり、より設定が簡単になります。
なお v2025 まではバグがあり、摩擦係数がおかしいです。v2025.1 で修正されているので、v2025.1 以降を使ってください。
Ifric=4 の仕組みと使い方
Ifric=4 では相対すべり速度 0 で静摩擦係数、速度が増えるほど動摩擦係数に収束していく形になります。
式はこちらです。
入力するのは Fric, C1, C2 の 3パラメータです。
- Fric = 静摩擦係数
- C1 = 動摩擦係数
- C2 は適当に調整
C2 を大きくするほど、ほんの少しの相対滑り速度で、一気に動摩擦係数に行きます。そうすると、学校で習った「まったく滑ってない時は静摩擦、すこしでも滑ったら動摩擦」を表現するには C2 を大きくしておけば良さそうですが、そうは問屋が卸しません。
こちらの記事で、摩擦は(摩擦も)バネであるという説明をしています。バネなので、摩擦力を出すには、ある程度の距離のずれが必要です。そして、ずれ=相対滑り速度 x 時間ですから、ずれるということは相対滑り速度が発生するということです。つまり C2 を大きくすると、初めから動摩擦だけで計算していることになります。そうなると、そもそも Ifric=3 など使う必要がなくて、最初から動摩擦係数を摩擦係数として指定しておけば良くなります。
Radioss での静摩擦の表現は、ある程度の滑りを許容しつつ、その許容範囲では、摩擦係数を大きくするという、学校で習う「まったく滑ってない時は静摩擦、すこしでも滑ったら動摩擦」とは完全に異なるものであるという認識をしっかり持つことが必要です。
例題
ダウンロード:
7z ファイルの中にフォルダが 2個ありますが、滑り速度が 0.1mm/s と 2mm/s のものになります。摩擦の定義はどちらも同じです。
このように、押し付けておいて、ずらすという解析です。
こちらが接触の定義で、緑が Ifric=4 の摩擦の定義です。
静摩擦係数 Fric=0.2, 動摩擦係数 C1=0.1, C2=1.0 としてあります。
こちらの式ですので、相対速度 V=0.1mm/s のときは μ = 0.19, V=2mm/s のときは μ =0.11 となる計算です。
では結果です。結果は剛体の反力 /TH/RBODY の結果をプロットしています。
滑り速度 V=0.1mm/s のときは、最終的に垂直力 Fz=0.766, 摩擦力 Fz=0.146 ですので、摩擦係数は 0.19 と予測通りです。
次は滑り速度 V=2.0mm/s の時です。Fz=39.1, Fx=4.44 ですので、摩擦係数は 0.11 とこちらも予定通りです。
ちなみに、接触力 Fz が異なりますが、今回、計算終了時刻が 11秒と 1.5秒というように、大きく異なるので、時間ステップを変更しています。そして時間ステップで接触剛性の決まる Istf=7 を指定しているため、接触力自体が異なっています。ただし摩擦係数は比率ですので、影響ありません。Istf=7 の参考記事はこちらです。