始めに
本記事ではシェル要素用のシートベルトのモデル化のための材料 /MAT/LAW119 (/MAT/SH_SEATBELT) を使った、1要素モデルの例題を示します。
本記事では、最低限必要な項目のみ設定するようにしています。
/MAT/LAW119 について
https://2026.help.altair.com/2026/hwsolvers/rad/topics/solvers/rad/mat_law119_sh_seatbelt_starter_r.htm
まず最初に、この材料は、シートベルトの布の特性を表すための材料ではありません。シートベルトを簡易的にバネで表現するための材料です。
バネ要素を何本も並行に並べるモデルを、HyperMesh の段階で作る代わりに、シェルの格子を利用して、Radioss 側でバネに置き換えるためのものです。
どこに何を入力するかなどは、例題モデルを見ながら行います。
例題
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長手方向に 2要素あるモデルでの引張試験です。1要素で行わなかった理由は、1要素だと、ばね力が正しく出ないという既知の問題があるためです。実際にベルトモデルを作ると、長手方向に数十~数百分割すると思うので、実用上、問題は出ないかと思います。
また、シェルの格子構造を利用したバネですので、メッシュはフリーメッシュではなく、かならず格子状のメッシュとします。長手x幅x厚さは 10x10x1mm で、強制変位は 2.2mm としています。
まずは、シェル特性カード /PROP/SH_ORTH (/PROP/TYPE9) から説明します。
本モデルで設定しているのは、次の色塗りの部分です。
緑は一般的な内容ですので、割愛します。
黄色は布のように曲げ剛性をなくす設定です(参考記事)。/MAT/LAW119 自体とは無関係です。
青が /MAT/LAW119 との組み合わせで必須の部分です。ここで、シェル要素のどの向きが長手方向で、どちらが幅方向なのかを指定しています。
ここで参照している /SKEW/MOV は X 方向がベルトの幅の方向です。そして必ず、ベルトモデルとなっている一つのシェル要素の節点を使って設定します。節点ではなく座標で設定する /SKEW/FIX は使えません。
それでは /MAT/LAW119 の説明です。多くの入力項目がありますが、基本的にバネなので M と K だけ入力すれば動作します。
中身はバネですが、モデル作成の段階ではシェルなので、M と K が少しバネの時と異なります。
M は長手方向に単位長さあたりの質量です。例題モデルは ton, mm, s 単位系のため、今回のモデルでは M=1.0e-7 ton/mm です。
K は長手方向の単位公称ひずみあたりの、ベルトの力です。今回のモデルは K=100N/ε で、長さ 10mm のベルトを 2.2mm 引っ張るため、ひずみは ε=0.22 ですから、100 N/ε x 0.22ε = 22N となればよいはずです。
拘束した 2節点の反力履歴がこちらです。1節点あたり 11N 出ているので、2節点で 22N と期待通りの挙動となりました。
補足情報
/PROP/SH_ORTH に /SKEW/MOV を指定しなくても、要素の節点の並び方で、長手方向、幅方向が決まります。ただし、本例題では、/SKEW/MOV を指定する方が目視による確認漏れなどの間違いが少ないだろうと判断して、/SKEW/MOV を指定しています。
また、本例題の _0001.rad には /H3D/SHELL/TENS/STRESS/NPT=ALL があり、応力コンタも表示されますが、実質バネ要素であり、意味のある数値とはなっていません。