/VISC/LPRONY で超弾性材料に粘性を与える例題


はじめに
Radioss には /VISC/LPRONY というカードがあり、超弾性材料に粘性を簡単に与えることができます。
何が簡単かと言うと、もともとの材料モデルが持つ剛性に対する割合で、粘性を決めることができるからです。
いつもなら、簡単な入力項目の説明をしてから、モデルの説明をするのですが、この材料は、この Form の部分がとてもややこしいので、結果を見てから理解を進めていきます。
Form=2 の例
ダウンロード:
Form=1 は使える材料タイプが限られているため、制限のない Form=2 から始めます。
1要素モデルで、動的な引張試験をします。動的というのは、時刻 0 から、いきなり 100N を与えます。
/VISC なしは粘性がないため、ずっと振動します。
材料モデルに LAW92, Arruda-Boyce を使いました。そして /VISC/LPRONY は γ1=0.5, τ=1.0e-4 秒です。結果を見る前に説明するのが難しいので、まずは結果を見ます。
荷重点の変位を見てみましょう。/VISC/LPRONY ありの方が、なしの方よりも 2倍くらい伸びています。
Form=2 がややこしいと言った理由はここです。今回何が起きたかというと
- /VISC/LPRONY 側の粘性に /MAT/LAW92 で決まる初期剛性の半分を γi=0.5 によって与えた
- だから止まる
- 与えた分を /MAT/LAW92 側から差し引いた
- だから最終的に余計に伸びる
ということです。
つまり /VISC/LPRONY を Form=2 として使った場合、瞬間的な剛性は変化しませんが、長期的な剛性は、もとの材料定義からは下がることに注意してください。
では次は Form=1 の例もやってみましょう。
Form=1 の例題
ダウンロード:
Form=1 に向けて材料は /MAT/LAW42 としました。/VISC/LPRONY は Form=1 と変えた以外は同じです。
アニメーションです。
Form=2 のときは、/VISC/PRONY を付けた方が伸びていたことに気が付いていたでしょうか?
では実際に変位をグラフで見てみましょう。
今回は、およそ半分のところで止まったことが分かります。つまり最終的な剛性は変化していません。Form=1 の時は
- /VISC/LPRONY 側の粘性に /MAT/LAW92 で決まる初期剛性の半分を γi=0.5 によって与えた
- だから止まる (ここまでは Form=2 と同じ)
- /MAT/LAW92 に対しては、何もしない
- だから最終的な伸びは同じ
ということです。
つまり Form=2 の場合、瞬間的な剛性は増えますが、最終的な剛性はもとの材料定義から変化しません。
Comments
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補足1
HyperMesh 2025 で /VISC/LPRONY がサポートされていないため、テキストエディタで手入力となります。
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補足2
/VISC/LPRONY の τ について書き忘れていました。粘性は、瞬間的に剛性を与えて、それを小さくしていくことで表現しているわけですが、時間 τ が過ぎると、その剛性が消えてしまうというイメージで良いかと思います。実際には指数関数的に小さくなるので、本当にぱっと消えるわけではないですが、そういうイメージが分かりやすいかと思います。
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