/VISC/LPRONY で超弾性材料に粘性を与える例題

はじめに

Radioss には /VISC/LPRONY というカードがあり、超弾性材料に粘性を簡単に与えることができます。

https://2024.help.altair.com/2024/hwsolvers/ja_jp/rad/topics/solvers/rad/visc_lprony_starter_r.htm

何が簡単かと言うと、もともとの材料モデルが持つ剛性に対する割合で、粘性を決めることができるからです。

いつもなら、簡単な入力項目の説明をしてから、モデルの説明をするのですが、この材料は、この Form の部分がとてもややこしいので、結果を見てから理解を進めていきます。

image.png

Form=2 の例

ダウンロード:

Form=1 は使える材料タイプが限られているため、制限のない Form=2 から始めます。

image.png

1要素モデルで、動的な引張試験をします。動的というのは、時刻 0 から、いきなり 100N を与えます。

image.png

/VISC なしは粘性がないため、ずっと振動します。

anim_form2.gif

材料モデルに LAW92, Arruda-Boyce を使いました。そして /VISC/LPRONY は γ1=0.5, τ=1.0e-4 秒です。結果を見る前に説明するのが難しいので、まずは結果を見ます。

image.png

荷重点の変位を見てみましょう。/VISC/LPRONY ありの方が、なしの方よりも 2倍くらい伸びています。

image.png

Form=2 がややこしいと言った理由はここです。今回何が起きたかというと

  • /VISC/LPRONY 側の粘性に /MAT/LAW92 で決まる初期剛性の半分を γi=0.5 によって与えた
    • だから止まる
  • 与えた分を /MAT/LAW92 側から差し引いた
    • だから最終的に余計に伸びる

ということです。

つまり /VISC/LPRONY を Form=2 として使った場合、瞬間的な剛性は変化しませんが、長期的な剛性は、もとの材料定義からは下がることに注意してください。

では次は Form=1 の例もやってみましょう。

Form=1 の例題

ダウンロード:

Form=1 に向けて材料は /MAT/LAW42 としました。/VISC/LPRONY は Form=1 と変えた以外は同じです。

image.png

アニメーションです。

anim_form1.gif

Form=2 のときは、/VISC/PRONY を付けた方が伸びていたことに気が付いていたでしょうか?

では実際に変位をグラフで見てみましょう。

image.png

今回は、およそ半分のところで止まったことが分かります。つまり最終的な剛性は変化していません。Form=1 の時は

  • /VISC/LPRONY 側の粘性に /MAT/LAW92 で決まる初期剛性の半分を γi=0.5 によって与えた
    • だから止まる (ここまでは Form=2 と同じ)
  • /MAT/LAW92 に対しては、何もしない
    • だから最終的な伸びは同じ

ということです。

つまり Form=2 の場合、瞬間的な剛性は増えますが、最終的な剛性はもとの材料定義から変化しません。

Tagged:

Comments

  • altair_fukuoka
    altair_fukuoka
    Altair Employee

    補足1

    HyperMesh 2025 で /VISC/LPRONY がサポートされていないため、テキストエディタで手入力となります。

  • altair_fukuoka
    altair_fukuoka
    Altair Employee

    補足2

    /VISC/LPRONY の τ について書き忘れていました。粘性は、瞬間的に剛性を与えて、それを小さくしていくことで表現しているわけですが、時間 τ が過ぎると、その剛性が消えてしまうというイメージで良いかと思います。実際には指数関数的に小さくなるので、本当にぱっと消えるわけではないですが、そういうイメージが分かりやすいかと思います。