1点積分ヘキサ要素 HEPH の限界と厚肉シェル要素による回避
初めに
Radioss には HEPH という私が入門用の演習書でもお勧めしているソリッド要素があります。1点積分のため計算コストが小さく、シェアロッキングもせず、1点積分にも関わらずアワーグラスも回避できるという、優れもので、かなり万能な要素です。
しかし 1点積分であるため、どうしても特定の問題には、対処しきれないことがあります。それがどのような問題なのか、そして、厚肉シェル要素がどのようにその問題に対処できるのかを、本記事で解説します。
1点積分のヘキサ要素が対処しきれない問題
それは、次のような問題が非線形材料で起きたときです。この例では、この要素は形を変えますが、体積は変わりません。つまり 1点積分要素の考え方では、ひずみが 0 になってしまうのです。
かなり意地悪な極端な例ですが、広目の板を、1層のヘキサ要素でメッシングして、曲げを与えると、これに似た状況になると思います。
材料は鉄で 300MPa で降伏として、本解析を行うと次のような結果になります。なんと右の図のように、これだけ盛大に変形しているにもかかわらず、塑性ひずみがゼロです。ひずみがゼロのため、塑性ひずみも発生できない状況になってしまっています。
モデルのダウンロード:
厚肉シェル要素だとどうなるのか
厚肉シェル要素 (/PROP/TYPE20) にも HEPH と同じようなコンセプトの低減積分の要素 HSEPH (Isolid=15) があります。要素を上から見たときの積分点は 1点ですが、厚み方向には 2点以上の積分点を持つことができます。まるでシェル要素みたいですよね。ですので、厚肉シェル要素(またはソリッドシェル、連続体シェル)などと呼ばれます。
厚み方向に 2点以上の積分点を取れば、先ほどの問題に対して、下図のように、上と下で体積が変化しますから、しっかりとひずみが生じます。
積分点毎にしっかり塑性域に入っているので、塑性ひずみもきちんと発生します。
本モデルのダウンロード:
他の回避策について
実は、他にも回避策があります。
一つ目は、厚み方向に 2層でメッシングすることです。
二つ目は、完全積分のヘキサを使うことです。
回避できるロジックは、先ほどと同じです。さらに言えば、回避できるロジックはアワーグラスの記事と全く同じというのも面白いところです。→記事へのリンク
しかし、これらは計算コストの面で、低減積分の厚肉シェルに適いません。本記事では比較等はしませんが、興味があれば比較してみてください。
まとめ
1層のヘキサ HEPH 要素で、結果に疑問を感じたら、低減積分の厚肉シェル HSEPH 要素を試してみてください。