SimSolidのベストプラクティス - 2結合設定について
SimSolidの解析では、ジオメトリインポート設定、結合設定、ソリューション設定が非常に大事になってきます。
これらの設定をうまく設定することで、SimSolidを用いて従来の有限要素と同精度の解析が行えます。
今回は結合設定について詳細に解説していきたいと思います。
(画像はクリックすると拡大します。)
その他の設定はこちら
ジオメトリインポート設定→SimSolidのジオメトリインポート設定について
ソリューション設定→SimSolidのソリューション設定について
最初に
SimSolidで結合を付与する際、溶接を実際に適用する場所は、結合を定義する前にシーム溶接コネクターを作成します。
理由は3つあります。
- 実際に近いモデリング。
- 以下で記述するポイントという概念から解放され、解析のコツを排除できる。
- 応力などの評価をする際より良い結果をえられやすい。
- 詳細な評価を行える→シーム溶接のポスト処理、SimSolid2022.3.1新機能シーム溶接反力の損傷判定
シーム溶接コネクターの作成方法はこちらをご確認ください。→シーム溶接
SimSolidの結合設定の特徴
SimSolidはジオメトリベースのGUIをもち、メッシュを作成しないため節点法による有限要素法と違い、節点や要素に接触を定義しません。
ただし、ジオメトリ上のフェイスに「点」として結合を定義します。
そして実際にこの「点」によって「固着」「滑り」「分離」「分離・接近」といった接触条件を表します。
また、結合を設定したことがあれば、「標準」「中」「高」と解像度を選択できることに気が付いたでしょうか。
この解像度により、ポイントの密度を指定できます。「標準」→「高」にするにあたり計算コストは上がることに注意します。
結合の注意点
結合が点によって表されることで、以下のように注意すべき問題が発生します。
- 応力集中の接合ポイント不足
結合部近傍の応力集中がある場合は、高い解像度が必要になります。 - ポイント不足による剛体移動
非常に薄いパートで標準の解像度を使用すると、結合が不安定になり、モデルに剛体モードが発生する可能性や、
ヒンジのように作用し、計算が不安定になります。
このように一列のみの結合は避けるべきです。解像度を上げるもしくは以下の方法で対処します。 - 結合の解像度を上げても結合ポイント数が少ないor薄板形状のものについて
特に薄板構造物に対して、結合の解像度を上げてもうまく接触が作成できないことがあります。
(パート間で荷重伝達がうまくいきません。)
その際は、シーム溶接コネクターで結合します。
結合の特定方法
SimSolidは結合を確認するための3つの機能が備わっています。
プロジェクトツリーの結合をクリックすることでアクセスできます。
- 切り離されたパートグループの検索/表示
この機能では結合されていないパートグループを検索することができます。
グループを複数選択して「結合」を押すことで選択したグループ間を結合することが可能です。 - 標準結合の確認
標準結合の確認では結合の状態をテーブルで確認することができます。
ポイント数でソートすることにより、結合ポイントが少ない結合、すなわち、ポイント数が不足している結合を簡単に発見することができます。
SimSolidでは現在ダイアログを複数表示することができないため、一度このテーブルを閉じたのちに解像度を上げ、ポイント数を増やします。 - 結合位置の確認
SimSolidでは、貫通やギャップがあるパートを問題なく取り扱うことができますが、特に応力が集中するパートに対しては大きすぎるギャップや貫通がないといえます。こちらから、貫通やギャップのある結合を確認することができます。
ポイント数の検証
実際にポイント数を増やすことで応力集中がどのようになるか検証してみます。
以下のようなモデルを用意します。
今回はインポート時の自動結合設定において、解像度を変化させてみます。
解像度「標準」
以下のようになります。結合が不十分な箇所が1か所(対称を考慮して2か所)あります。
また、応力集中が予想される場所も拡大してみます。
ミーゼス応力を確認すると以下のようになります。
結合が不十分で途切れている場所は、結合されていないため、応力集中が発生しています。
また、結合不足による応力集中部を無視したものも載せます。
解像度「中」
以下のようになります。
先ほどと同じ場所を拡大してみます。
ミーゼス応力を確認すると以下のようになります。最大応力の発生箇所が下部へと移動しました。
また、最大応力値も上昇したことが確認できます。
解像度「高」
以下のようになります。
先ほどと同じ場所を拡大してみます。
ミーゼス応力を確認すると以下のようになります。最大応力の発生箇所が変化したことがわかります。
また、さらに最大応力値が上昇したことが確認できます。
比較
それぞれの解像度における応力集中部のコンターを比較してみます。
結合の解像度を上げれば、結合部近傍の応力集中をよく表現できそうです。
しかし、前述したように解像度を上げれば計算コストは増えます。
結合のおすすめの定義方法
結合数が増えた場合、計算コストがネックになることが容易に想像できます。どのように回避したらよいのでしょうか。
結合設定のおすすめの手順を紹介します。
- 解像度「標準」で結合設定を行う
- 結合ポイントが一列になっている箇所や、解像度が足りておらず不十分な箇所の解像度を上げる。
- 応力アダプティブ(v2022.3.1まで)Global+Local(v2023以降)で解析を実行
- 応力集中部近傍の結合の解像度を上げる。(応力集中部があるパートや、特に評価したいパートの結合の解像度も上げます)
詳細は以下の動画をご確認ください。
このように必要な箇所の解像度を上げることで、計算コストを抑えることができます。
実行時間は20秒と解像度を全て「中」にした時よりも早く、最大応力は解像度「高」と同程度のものになっています。
全て結合の解像度を「高」としたものと比較すると以下のようになります。
ほぼ同精度の解析が実行できているのがご確認いただけるかと思います。
その他
その他の注意点を紹介します。
- 「分離」、「分離/接近」の接触タイプを定義する際は解像度を「高」とします。
- 仮想コネクターの「標準結合」(剛体要素と等価)を広い面に定義しない方が良いです。