HyperWorksのモーフィングを用いて所望の形状に曲げた状態のフレキシブルプリント基板のモデルを作成し、Fekoを用いてSパラメータの計算を実施する手順のご紹介

Omori
Omori
Altair Employee

はじめに

一般にプリント基板設計CADにおいては、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit, FPC)の曲げを考慮せず、平面上に展開した状態の回路を設計します。一方、FPCを面外に曲げたとき、周波数帯によっては回路のSパラメータ(信号の反射および透過)特性が変化することが知られています。

FPCの設計初期段階において面外の曲げによる回路特性への影響を考慮することで、手戻り削減による開発期間の短縮が期待されます。

本件では平面上に展開されたFPCのCADデータをもとに、HyperWorksのモーフィングを用いて所望の形状に曲げた状態のモデルを作成し、Fekoを用いてSパラメータの計算を実施する手順を紹介します。この記事では、弊社PollExのサンプル基板モデルのHDMI回路パターンを切り出し、FPCのサンプルとして使用します。

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FPCモデル全体図

 

サーフェスメッシュの作成

HyperWorksを起動し平坦な状態の基板CADデータをインポートします。また曲げた状態の基板外側表面のCAD形状をインポートします。

ここで予め曲げの起点においてサーフェスを分割しておくと、モーフィング適用時に比較的スムーズなメッシュが得られます。

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基板CADデータおよび変更後の形状データの読み込み

また曲げの角度が90°以上の場合、複数の段階に分けてモーフィングを行うと、比較的メッシュのゆがみが少なくなります。本例題では中間のステップとして30°曲げた状態の形状を作成し、2段階(30°、90°)のマッピングを実施します。

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中間曲げ形状の例

automeshにて基板モデルの表面に三角形要素を生成します。

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三角形要素生成例

 

モーフィングの実行

本例題ではHyperWorksのモーフィング機能(HyperMorph)の一つであるmap to geomを用いてFPCのメッシュの形状を変更します。

HyperMorphoのmap to geomメニューにて、map elementsで形状変更対象の三角形メッシュを選択し、map to surfaceにて曲げた状態のサーフェスをマッピングのターゲットとして選択します。

マッピング方向のベクトルとしてalong vectorにて、変更前のメッシュの節点(N1)と、その節点に対応する変更後の位置の点(N2)を選択します。

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モーフィング方向ベクトルの指定

auto mappingボタンにてマッピングを実行します。

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map to geomによるモーフィングの実施例

基板の各層の形状について、上記のモーフィングの手順を適用します。

テトラ要素の生成

本件ではFekoのモーメント法と有限要素法のハイブリッド解法を使用してSパラメータの計算を実施します。

モーフィングで形状変更した三角形メッシュを用いてtetrameshにてテトラ要素を生成します。また基板の外側に空気層のテトラ要素を生成します。

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テトラ要素の生成

生成した要素のエクスポート

生成した要素をNastran形式でエクスポートします。ここで部品ごとにメッシュをエクスポートすると、CADFEKOにおける材料の割り当てが比較的容易になります。

CADFEKOによるSパラメータ計算設定およびFEKOによる解析の実行

以下CADFEKOを起動してSパラメータ計算の設定を実施します。

必要に応じてModel unitにて長さの単位系を設定します。本例題ではmmを使用します。

ファイルメニューのImport > Meshにて前項で保存したNastranメッシュをインポートします。インポートの際に長さの単位のスケーリングに注意します。本件ではmm単位系にてメッシュを生成したので、Import meshメニューのAdvancedタブにてScale factor to metersに1e-3を入力してImportをクリックします。

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Import Meshメニュー

読み込んだ部品の材料プロパティを設定します。

全ての部品についてインポートと材料設定が完了したらmerge meshにてメッシュをマージします。

Source/LoadのFEM line portメニューのmesh portによりポートを設定します。Create FEM line port (mesh)のas pointsを選択し、ポートの起点・終点の座標値を入力しCreateをクリックします。

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FEM line portの設定

Source/LoadのFrequencyメニューで解析対象周波数を設定します。

Configurations+ボタンをクリックしてMultiport S-parameterをクリックし、Sパラメータ計算の設定を実施します。

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Sパラメータ設定メニューの起動

Sパラメータ設定メニューにてAdd portでポートを追加し、2番目のポートをPort 2に変更します。1番目のポートのみを給電する場合はPort2のActiveのチェックボタンを無効にします。設定が完了したらCreateボタンをクリックします。

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Sパラメータ計算ポートの設定

データを保存し、Fekoによる解析を実行します。

POSTFEKOによるSパラメータの表示

解析が終了したらPOSTFEKOを起動し、計算結果(*.fekファイル)を開きます。RequestsのSParameterを右クリックしてAdd to new>Cartesian graphを選択し、Sパラメータのグラフを表示させます。

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Sパラメータの表示

画面右側のdBチェックボタンを有効にするとdB表示されます。画面右側のS-Parameter右側のセレクションリストでS11、S21の表示を切り替えることができます。

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Sパラメータのグラフ

参考までにFPCを曲げた後と曲げる前の平坦な状態のS21を比較します。本例題では6.6GHzにおいてS21の違いが大きいことがわかりました。

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S21の比較(緑:曲げた後、青:曲げる前の平坦な状態)

まとめ

本件ではHDMI回路を例題として、平面上に展開されたFPCのCADデータをもとに、HyperWorksのモーフィングを用いて所望の形状に曲げた状態のモデルを作成し、Fekoを用いてSパラメータの計算を実施する手順を紹介しました。