シンプルなモデルを使用して、romAIの機能をチェックしていきます。実測データを使用する場合は、加速度を使用したいケースが多いと思いますので、第8回は加速度入力のROMが作れるかを確認します。
問題設定
第7回は力入力のばねマスダンパー系の動的モデルを作成しました。今回は加速度、速度、変位入力の問題を考えてみます。1自由度ばねマスダンパー系で片側の境界を強制的に動かした場合のマスの加速度を予測することを考えます。

モデルはKnowledgeBaseで公開済みの下記モデルを流用します。N=1とすることで、1自由度のばねマスダンパー系として使用します。
KnowledgeBase: N自由度ばねマスの1Dモデル
振幅、周波数が増加する加速度入力に対して、15sec以降で共振が表れる加速度応答が得られました。この入出力関係を再現するromAIモデルを作成してみます。

romAIの設定
romAIの設定を行います。
入力が境界の加速度、出力がマスの加速度、状態量をマスの変位、速度としました。状態量の考え方は第7回で説明しましたので省略します。
Inputs: accin
Outputs: acc
States: x, v

Activateのモデルは線形なので、Model Type: linearとしました。
データはノイズのないデータですので、第6回を参考に、データの分割は行っていません。

加速度入力の計算結果
romAIから出力されたマスの加速度履歴を元波形と比較します。残念ながらまったく予測できていません。

では、何が悪かったのでしょうか?第7回で実施したように力入力ではうまくいきましたので、今回のケースも入力をばねダンパー荷重とすればうまくいくはずです。ばねダンパー荷重は境界とマスの相対変位および相対加速度で決定されます。したがって、境界の加速度ではなく、境界の変位と速度情報があれば、内部的にばねダンパー荷重が予測され、結果として、マスの加速度も予測できるはずです。

romAIの設定やり直し
入力を境界の加速度ではなく、境界の変位、速度に変更しました。
Inputs: xin, vin
Outputs: acc
States: x, v

その他の設定は同様です。
変位・速度入力の計算結果
romAIから出力されたマスの加速度履歴を元波形と比較します。今回はぴったり一致しました。

まとめ
今回は加速度入力のROMが作成できるかを確認しました。一般に境界は剛性・減衰で他の部品と結合されていますので、入力される荷重は加速度ではなく、変位、速度に依存します。したがって、加速度の代わりに、変位、速度を入力とすることで、正しくROMを作成することができます。
剛性でしか接続されていないケースでは、変位入力のみで十分だと思いますし、減衰でしか接続されていないケースでは、速度入力のみで十分だと思われます。各自お試しください。