非線形解析と対称条件

AltairNakagawa
AltairNakagawa New Altair Community Member
edited November 2020 in 質問と回答 (Q&A)

計算時間を短縮するテクニックの一つとして、対称条件を使う方法があります。モデルも拘束条件も荷重条件も対称であれば、計算モデルを対称面で切って1/21/4にすることで必要なメモリや計算時間を大幅に削減することが可能です。しかし、解析する現象によっては注意する必要があります。それは非線形解析で変形モードが不安定な場合です。添付図は中央部に補強部材の入ったハット形断面の部材を三点曲げで変形させる事例です。XZ面とYZ面に対して対称形状で荷重も対称なので左の図では1/4モデルで計算しています。想定したようにノッチ部周辺に局所的な変形が起こっている様子が分かります。このモデルを実物通りにフルモデルで計算した結果が右の図です。手前側のノッチの方が大きく変形していて、明らかに対称ではない変形状態になっていることが分かります。これは、非線形解析における収束計算のごくわずかな差異により一方のノッチ周辺の方がもう一方よりも応力が大きく計算されると、そこから先はアンバランスがどんどん助長されて変形量の差が大きくなっていくことによりもたらされた結果です。つまり、この例では対称条件を適用するのは適切ではなく、フルモデルで計算を行う必要がある、ということになります。これは解析上だけではなく、実現象としても発生します。この例の場合、実際に複数回試験を行ったらどちらのノッチが大きく変形するかは、製造上の誤差や偶然によって左右されて一概には決まらないことが予想されます。このように、非線形な現象を再現しようとする場合にはちょっとした不安定性が最終的には大きな影響をおよぼす場合があることに注意が必要です。

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