/INTER/TYPE25: Istf=7 で弾性係数が非常に小さい材料の接触を行う例題

始めに

こちらの記事では Istf=4 が鉄とプラスチックのように、ヤング率に差がある材料の接触を安定して計算することに有効である、ということを示しました。

しかし、ゴムやフォーム材のように、さらに弾性係数の小さいものもはどうなるでしょうか?Istf=4 は材料の弾性係数を使うため、もともとの材料の弾性係数が相対的に非常に小さい場合、接触剛性が小さすぎて、跳ね返すことができなくなってしまいます。端的に表現すれば、Istf=4 は弾性係数がゼロの材料に対して、接触剛性を計算できない、ということになります。

Istf=7 の説明

ばねの時間ステップ dT は、dT = ( K / M ) ^ 0.5 です。K: ばね定数, M: 質量にて。

逆に言えば、解析全体の時間増分 DT を決めてあるなら、DT 以下になる最大の K を求めることができるわけです。K=M dT^2。このように、材料の弾性係数に関係なく、接触剛性を決めることができます。

詳しくは /INTER/TYPE25 リファレンスのコメント 15 です。

時間ステップぎりぎりの剛性は少し安定性に不安が付きまとうので、デフォルトで一桁下がっています。ばねの代表的な質量は、平均、二乗平均などいろいろ考えられるかもしれませんが、ここでは、この式が採用されています。どれが正しいとかではなく、ここではこの式であるととらえてください。

鉄とゴムの接触の例

このように、ゴムを鉄にぶつけてみます。

それぞれの材料です。ゴムの G の計算は、/MAT/LAW42 の式 3 です。

Istf=4 の例

ぱっと見良さそうなのですが、実は見てわかるくらいに食い込んでいます。

この部分が解析の主要な目的なのかどうかで、是非の判断は分かれるかもしれませんが、もし、この接触自体を見たい、という場合には、少々、ばね剛性が弱すぎたようです。

例題モデルのダウンロード:

Istf=7 の場合

Istf=7 では見てわかるほどの食い込みは発生しません。

例題モデルのダウンロード:

剛性がほとんどない場合の接触

次の解析をしてみます。

材料は /MAT/VOID (FEM としての解析はしない) で /RBODY で剛体化しています。E=1e-30 MPa とした理由ですが、E=0 としてしまうと、接触剛性計算そのものをスキップしてしまうようなので、Radioss で入力できる最小の正の値を入力しました。

Istf=4 の例題

このように突き抜けます。

接触の計算自体をしていないのではと思うかもしれませんが、接触圧力はちゃんと出ています。小さすぎて、跳ね返すことができていないのです。

このモデルのダウンロード:

Istf=7 の例題

ちゃんと跳ね返ります。

本モデルのダウンロード:

まとめと補足

Istf=4 だと弾性係数が小さすぎて、きれいな接触計算の出来ない問題に Istf=7 が有効であることを示すことができたと思います。

実は、記事が長くなってしまったのでやっていませんが、前回の記事の、鉄とプラスチックの例でも Istf=7 はきれいな解析ができます。また、やってみると分かりますが、鉄同士でも問題ありません。

私自身も Istf=4 をモデリングの基本として、皆さまにお伝えしてきましたが、Istf=7 を基本にしようかと検討しているところです。

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