接触剛性定義フラグに Istf=4 をお勧めしている理由を示す例題


始めに
私は Radioss の入門演習書 (本記事作成時点で v2024 向け) で、接触剛性の決定フラグに Istf=4 を最初に試してみることをお勧めしています。デフォルト設定 (Istf=0) よりも、Istf=4 の方が汎用性が高いと考えているので、そのようにおすすめしているのですが、本記事で、実際に Istf=0 よりも Istf=4 の方がうまくいく例を示してみたいと思います。
Istf=0, 4 の違い
/INTER/TYPE25 のリファレンスのコメント2 にあるようにデフォルト Istf=0 の場合、接触剛性はこのように決まります。節点対要素面の接触ですので、Km は要素面側の接触剛性、Ks は節点側の接触剛性となります。
Istf=0 のときは、面側の剛性のみで決まり、Istf=4 の時は、両者の小さい方となります。
Km, Ks の計算式も書いてありますが、よほど極端にメッシュサイズが違ったり、極端なシェルの板厚にでもなっていない場合、Km と Ks の比は、おおよそ材料の剛性に比例すると考えておけばよいです。
Istf=4 の方が計算がうまくいくことを示す例題
おおよそ弾性係数の桁が合っているような材料同士の場合は、Istf=0 でも問題ありません。しかし鉄 (E=200000MPa) とプラスチック (E=1000MPa) のように、桁が 100 も違うような場合には、Istf=4 を使う方がうまくいきやすいです。
このように鉄にプラスチックをぶつけてみます。
材料は /MAT/LAW2 で先ほど既述したように E=200000MPa と 1000MPa です。
Istf=0 の時
モデルはこちらです→
↑ のように見た目には問題がないように見えます。
しかしエネルギー履歴によると、エネルギーが勝手に増えてしまっています。本モデルは 100mm 角の箱で、密度 1e-9 ton/mm^3 で 15000mm/s ですから、全エネルギーは '100^3*1e-9*15000^2 = 1.125e5 mJ' なのですが、どこからともなく 4倍に増えてしまっています。
Radioss 自身はエネルギー保存則の計算はしていないので、多少の変化はあるのですが、「きれいな計算ができていれば、エネルギーはまずまず保たれる」という経験則もありまして、それに大きく反していますので、あまり良い計算とは言えなさそうです。
ちなみに、このような衝突問題でのエネルギー履歴グラフの見方は、演習書の 2.12.1 節をご一読ください。
Istf=4 の時
モデルはこちらです。
こちらも見た目は問題ありません。
そして、全体のエネルギーバランスも正しく解けています。エネルギー保存則を解かなくてもここまで保つことができているわけですから、やはり Istf=0 の結果はおかしいと言わざるを得ないと思います。
まとめと補足
Istf=4 は Istf=0 より、汎用性の高いことを示すことができたと思います。
以上の結果から、まずは Istf=4 を使ってみてください、で終わりにしたいところなのですが、実はもう一つ Istf=7 という、より汎用性が高そうな手法があります。本記事は長くなってしまったので Istf=7 については別の記事にします。入門演習書も次のバージョンからは Istf=7 をお勧めしていくことにするかもしれません。このあたりは私自身も、どうしていこうか少し迷っているところです。