/MAT/LAW117 リファレンスガイド記載の例題について解説


概要

v2022 に新規搭載された結合材料 /MAT/LAW117 のリファレンスガイドに記載されている設定例について、どのような意味なのかと言うのを解説します。様々なオプションの詳細説明はリファレンスガイドそのものを見てください。

https://2022.help.altair.com/2022/hwsolvers/rad/topics/solvers/rad/mat_law117_starter_r.htm

 

例題の説明

#---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----|
/UNIT/1
Units
                  kg                  mm                  ms
#---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----|
/MAT/LAW117/1/1
CONNECT MATERIAL
#              RHO_I
              7.8E-6
#                 EN                  ET     Imass      Idel     Irupt
                   5                 1.2         0         1         0
#   Fct_TN    Fct_TT                  TN                  TT            Fscale_x
         0         0                   2                 0.7                   0
#                GIC                GIIC               EXP_B              EXP_BK               Gamma
                   1                1.75                   2                   2                   1
#---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----|
#ENDDATA
/END
#---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----|

 

この例題について説明します。では順番に数値が指定されている部分を説明していきます。

 

RHO_I は密度ですが、次元は [質量/面積] となります。というのも、この要素は、ソリッドとソリッドの間に挟んで使うときに、厚さ 0 にして使うことが想定されているからです。厚さが 0 だと体積が 0 になってしまうので、一般的な密度 [質量/体積] が使えません。

面積と言っているのは接着面の面積のことです。例えば接着面を 10mm x 10mm とした場合、高さが 0mm でも何 mm でも、その要素の質量は 7.8e-6 * 10 * 10 = 7.8e-4 となります。

面積の説明

 

EN は、垂直方向に 1 の長さを変化させたときに、要素に生じる垂直方向の応力です。普通の材料はここに弾性係数 (ひずみを 1生じさせた時に発生する応力) が入りますが、厚さ 0 だとひずみは無限大になってしまうので、この要素にはひずみという考えができません。そこで [ 応力/長さ ] としています。今回の例では 5 GPa/mm となります。この要素を垂直方向に 1mm 伸ばすと 5GPa 発生することになります。

ET は EN の面に平行な方向版です。

Idel は何個の積分点が破断条件を満たしたら要素を削除するかです。この要素は 4積分点なので最大 4です。デフォルトが 1なので、普段は放っておいて、調整が必要な時だけ触るのが良いかと思います。

TN は垂直方向の最大応力です。下の模式図のこの部分です。応力は TN までは線形増加、TN 以降は線形減少です。今回 EN=5 [GPa/mm], TN=2 [GPa] なので TN/EN=0.4 mm と 0.4mm までは線形増加して TN に達することになります。

模式図の中のTN

TT は TN の横方向版です。

模式図の中のTT

 

GIC は垂直方向のエネルギ解放率で次元は [応力*長さ] です。何のことかよくわからない次元になってますが、模式図で見ていただくと、この三角形の面積です。どれだけ伸びたら応力を 0 にするか決めていただいて (図のδF_I) 三角形の面積出してもらえれば大丈夫です。

GICの説明

 

GIIC は GIC の横方向版です。

GIICの説明

 

EXP_B は、純粋な垂直モードと、純粋な平行方向のモードをどのように重ね合わせて、中間的なモードを表現するかです。この式は一見分かりにくいですが (そしてリファレンスには EXP_G と EXP_B の両方の記号が出てきますが、同じものです、、、)

EXP_Gの説明

今回 EXP_G = 2 なので、これって F=(x^2 + y^2)^1/2 っていうことで、つまり円の方程式です。また、もし EXP_G = 1 なら F=x+y という直線の式です。 デフォルト値は 2 なので、始めは触らずに必要に応じて調整すると言う形で良いかと思います。

EXP_Bの説明図

 

EXP_BK と Gamma はこの定義方法では、意味を持たない数値となっています。

 

1要素モデル

横x幅x高さ=10mm x 10mm x 0mm モデルで、垂直方向に 1mm 引っ張ってみました。

1要素モデルアニメーション

 

まず質量は _0000.out に記載されています。面積密度 * 面積なので 7.8e-6 * 10 * 10 = 7.86e-4 のはずです。正しい質量となっています。

PART MASS & INERTIA
-------------------


PART :          1solid
----
 Mass        Ixx         Iyy         Izz         Ixy        Iyz        Izx
 7.8000000000000E-04 1.9500000000000E-02 1.9500000000000E-02 3.9000000000000E-02  0.000000000000      0.000000000000      0.000000000000    
 X           Y           Z           Kin. Energy Vx         Vy         Vz
  0.000000000000      0.000000000000      0.000000000000      0.000000000000      0.000000000000      0.000000000000      0.000000000000    

 

また今回 EN=5 [GPa/mm], TN=2 [GPa]  のため TN/EN = 0.4mm で 2GPa に到達するはずです。また、GIC = 1 [GPa mm] です。GIC = TN * 応力0の伸び * 1/2 のため、応力0の伸び = 2 * 1 [GPa mm]/ 2 [GPa]= 1mm にて応力 0 となるはずです。グラフで確認するとその通りになっています。

 

本モデルのダウンロード: law117_one_elem_test_model.7z

 

アルテアジャパン公式製品リンク

https://www.altairjp.co.jp/radioss/