Inspire Mold と Physics AIの連携による高速な射出成形解析
Inspire Moldは、樹脂の射出成形プロセスをシミュレーションする事が可能なソフトウェアです。射出成形プロセスは、金型を製作してしまえば、ある程度の複雑な形状や微細な製品の大量生産が可能です。外装品など、意匠面の美しさを要求される樹脂製品には最適な成形方法と言われています。一方で、形状や条件にもよりますが、射出成形時の不良現象としまして、反りの変形がしばしば問題となります。
反りの変形は通常、不均一な冷却と残留応力によって発生する寸法の歪みです。その対策としまして、一般的に反りに抵抗するための構造的な目的でプラスチック部品の主壁に追加される形状としてリブがあります。ここでは、リブ設計が反りに及ぼす影響を検討しています。Altair Physics AIは、過去のシミュレーションデータから学習することで、高速な物理予測を実現します。
以下は幾つかの形状のリブデザインを学習した簡単な事例です。異なるリブパターンとリブの高さが設計のバリエーションとして考慮されています(図1)。Physics AIはInspire Moldシミュレーション結果データの*warp.h3dファイルを使用して学習します。
図1
学習には、トレーニングとテストのためのデータセット作成が各セットで計算時間が設計を含めて約3時間程度要しました。次に、Physics AIでのデータ学習に約22時間程度が必要でした(図2)。
図2
次に、学習した過去データに対して、新リブ形状をPhysics AIで実施した場合、10秒程度で反り変形結果を予測出来ます。Inspire Moldで実施した反り結果と比較しても定性的にも定量的にも大差ない結果が得られています。(図3)
図3
射出成形のプロセスでは、リブの形状を考慮した設計検討は反り変形の抑制に対して重要な対策になり得ます。このような検討はAltair Physics AIを使用して非常に高速に検討する事が可能になりました。Inspire MoldとPhysics AIを連成した新機能は、その様な検討を行う事が出来ます。
なお、今回のブログ作成にあたり、モデル作成など多大な協力をAltair IndiaのChaitanya Ramakant Logade氏より頂きました。ありがとうございました。