ERP を使えば構造物だけの最適化で騒音を下げることができそうですというお話です
図付きの全文は、ログインして PDF を取得してください
OptiStruct 最適化実例集
ERP という指標を使って騒音を低減してみよう
アルテアエンジニアリング株式会社 福岡展行著
課題
構造物が発生する音(工事音、エンジン音、スピーカー音)などは、振動する構造物が周囲の空気を振動させることで発生しています。詳細に評価するには、下図のように、構造物と音響空間の両方を連成して計算しなくてはなりません。
いつでも、どんな部品・アセンブリに対しても、音響空間との連静解析を行うのは手間ですし、音響との連静解析をすると OptiStruct が利用できる最適化の種類も減ってしまうため、もっと簡易的に構造物の解析だけで得られる指標はないでしょうか?
そこで考えられるのが ERP (Equivalent Radiated Power の略、等価放射パワー)です。構造物の速度の面直成分が音響空間にエネルギーを与えるという考えに基づいています。次式で書かれます。次元的には単位時間あたりに音響空間に放出するエネルギーとなります。
ここで lf: 損失係数、ρ: 密度、c: 音速、v: 速度の面直成分、∫ds: 対象の面の面積
この ERP を低減するような最適化を行うことで、結果的に音を下げることができないだろうか、というのが今回のお題となります。
最適化前の構造物で、構造-音響解析
下図のような構造物の紫玉の部分を上下に力で加振します。
周波数ごとの荷重は以下のように、周波数が増えるに応じて荷重も増えるようにしています。
その構造物を包み込む音響メッシュ(直径 500mm の球体)を下図のように準備して、境界は無限境界(無限要素や無限境界要素などとも呼ばれます)とします。つまり音は一切反射せずに、外に出て行きます。
マイクは構造物より 2000mm ほど離れた下図の 6 点で行い、平均値で評価します。なお、マイク位置をつなぐポリゴンは、マイクの位置を分かりやすく表示するためのもので、物理的な意味はありません。
計算すると、音響メッシュ内では次のような圧力分布が得られます 。
6箇所のマイクで圧力の平均値を測ってみると、1983Hz で 96dB という圧力を記録しました。
また、構造物の発生する ERP は 328Hz と 1983Hz に同じレベルのピークが現れています(と言うより、実は、2つのピークが同レベルになるように荷重を調整しました。ピークのレベルが同じくらいの方が最適化をやりやすかったので)
ERP を使った構造物の最適化
2つの同レベルの ERP のピークを、じんわり下げたいと考えて、ERP の平均値(次式)を最小化するトポグラフィー最適化をしてみました。
ここで、n: 計算した周波数の数、i: 各周波数
下図の見方は、青い部分はもとのまま、赤い部分をへこませると良いということになります。
この最適化では、ERP が全体的に非常に小さくなりました。
最適化後の構造物で、構造-音響解析
果たして、ERP を最小化した構造物が発生する音は小さくなるでしょうか?
見事に、最大圧力が 96dB から 81dB まで下がり、全体的にも低下しているという結果になりました。
つまり、ERP を用いた構造物のみの最適化で、最終的な音を小さくすることができました。
期待
最終的な音を小さくするのに、ERP を用いた構造物だけの最適化が有効であるなら、次のことが期待できます。
l 短い期間で大量の検討を行える
l 設計の早い段階である程度の性能が確保できるため、出戻り設計が減り、開発速度が上がる
参考情報
本資料は、ERP の最適化に関しては、ヘルプの事例 OS-E: 2005 をアレンジしています。音響との連成解析については、本資料と同じモデルではありませんが、ヘルプの事例 OS-E: 0320 に無限境界を用いた音響解析例があります。
全文PDF,