CDTireのばね・減衰特性を考慮した車両モデルの固有値解析


機構解析Altair MotionSolveには線形化機能があり固有値計算により車両の固有振動数や固有モードの評価も可能です。

ただし、CDTireを使用している場合は、線形化時にはフリーの条件となり、タイヤのばね・減衰特性は考慮されませんでした。

バージョン2023.1より、線形化時にCDTireをField Entityのばね・減衰特性に置き換える機能が追加され、固有値計算でもタイヤのばね・減衰特性が考慮されるようになりました。本記事ではその方法を説明します。

本記事で使用するサンプルモデルは下記よりダウンロード可能です。

fv_nodriver.mdl

 

事前準備

ExtensionsのVehicle Toolsをオンにします。

オフの場合、Pythonコマンド実行時にエラーが発生します。

 

過渡応答計算でのモデルの保存

MotionSolveの固有値計算は任意の時刻で行うことができます。CDTireを考慮した線形化・固有値計算を行う場合は、線形化・固有値計算を行いたい時刻で<Save/>コマンドを用いてモデルを保存します。

たとえば、5 sec毎にモデルを保存しておくと、5 sec毎の線形化・固有値計算が可能です。過渡応答解析を繰り返し実施する必要はありません。

<Simulate analysis_type="Transient" end_time="5.0" print_interval="0.01"/>
<Save
     model_file   = "Saved_model_t05.xml"
/>
<Simulate analysis_type="Transient" end_time="10.0" print_interval="0.01"/>
  <Save
     model_file   = "Saved_model_t10.xml"
/>
<Simulate analysis_type="Transient" end_time="15.0" print_interval="0.01"/>
  <Save
     model_file   = "Saved_model_t15.xml"
/>
<Simulate analysis_type="Transient" end_time="20.0" print_interval="0.01"/>
  <Save
     model_file   = "Saved_model_t20.xml"
/>

 

CDTireを考慮した線形化・固有値計算の実行

MotionViewでPython Windowを表示し、次のPythonコマンドを実行すると、CDTireを考慮した線形化・固有値解析が行われます。

MotionViewで開いているモデルは閉じられますので、現在開いているモデルは関係ありません。

実行するPythonコマンドは以下です。

from cdt_linear import init_linear
workpath=r"G:\data\Motion_Training\CDTire2Field_transient_automation_231214\work_fv_nodriver_smalldof_save"
init_linear.execute(workpath + "/fv_nodriver_Run_ana_0.xml", workpath + "/Saved_model_t05.xml")

ライブラリをインポートして、init_linear.execute(過渡応答計算のxmlファイル名, 保存したモデルのxmlファイル名)で実行します。

これで、保存したモデルの状態で線形化が行われ、固有値計算が行われます。xmlファイル名はフルパスでの指定が必要です。

 

処理内容

CDTire単体の加振計算

保存した時刻でのタイヤ軸力、タイヤ回転数を用いて、タイヤ単体の定常回転計算と6軸加振計算が行われます。

4輪ある場合は、1輪毎に上記の計算が繰り返し4回行われます。

MotionViewの自由度チェックを有効にしている場合は、自由度チェックの画面が表示されますので、OKをクリックすると計算が進行します。自由度のチェックはオフにしておくことを推奨します。

Test_rigというフォルダが自動生成され、その中に4輪分のタイヤ単体のモデルおよび結果が格納されます。

 

CDTireの線形化

タイヤ単体の加振計算が完了すると、.kcmというファイルが生成され、6 x 6の剛性マトリクスと減衰マトリクスが算出されます。

上段の6 x 6が剛性マトリクス、下段の6 x 6が減衰マトリクスです。

同時に車両モデルと統合した_linear.xmlが生成されます。

<Force_Field/>が追加され、この中で上記の剛性マトリクス、減衰マトリクスが書き込まれます。

 

車両の固有値解析

車両の固有値解析を行うためReload_Run_Linear.xmlが生成されます。

上記の線形化したCDTireと車両モデルと統合した_linear.xmlを読み込み、線形化前のCDTireであるGFORCEを無効化して、Linear解析を行います。

解析まで自動で行われ、固有値計算結果の_linear_linz.h3d、_linear_linz.mrfが生成されます。

 

結果の確認

HyperViewで_linear_linz.h3dを開くと、CDTireを考慮した車両の固有値、固有モードが確認できます。

Linear解析実行前に、線形化したCDTireのForce_Fieldを無効化することで、タイヤ有無での固有値の比較も行えます。

 

使用ソフト

Altair MotionView/MotionSolve