断面のつり合い力 (自由体力、フリーボディダイナミクス) を求める FBD の機能ですが、次の図のように、剛体 RBE2 がある部分で、つり合い力がおかしくなることがあります。下の図は荷重 1.0 の片持ちばりなので、せんだん力はどこでも 1.0 のはずですが RBE2 のある場所で 0.7 まで下がってしまっています。
実はこちらの記事で RBE2 が入っている断面があるときは MPC 力を考慮すればよい、という記事を挙げているのですが、事態はそれほど単純ではなく、MPC 力を考慮したら間違ったつり合い力となる場合や、考慮してもしなくてもどちらでも良い場合もあることが分かりました。
https://community.altair.com/community/ja/?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0125044
そこで本記事では、どのようなパターンがあるのかを説明し、最後に完全な回避策をお伝えします。
なお、先の絵に載せたような、モデルを一本のはりに見立てて、その上にせんだん力やモーメント図を描画する方法については、次の記事をご参照ください。
https://community.altair.com/community/ja/?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0121546
本節で使うデータはこちらです。model_with_rbe2.7z
(本記事の検証は HyperMesh 2024 で行っており、7z ファイルに含まれている .hm ファイルは HyperMesh 2024 で開くことができます。)
パターン 1 はこのパターンです。このパターンの時は、MPC 力を考慮すると、つり合い力がおかしくなります。
なお FBD には 3種のデータタイプがあります。断面全体のつり合い力は、各節点のつり合い力を集計座標で集計したものであり、各節点のつり合い力は、節点力の要素内力分というのが HyperMesh の仕様です。つまり、節点力がすべての計算のもとになっているので、本記事では節点力を検証することにします。
要素内力だけで、正しいつり合い力 (-0.511*2 + 0.011*2) 1.0 が出ますが、
RBE2 の貢献分である MPC 力がこうなっているので、
合計すると、このように 0.68 (-0.35*2+0.011*2) まで減ってしまいます。
つり合い力の算出に使う内力だけで成立しているため、つり合い力の表示でも正しい値が出ます。
次のパターンはこちらです。パターン 1 との違いは、節点の選択です。こちらは RBE2 の浮いている節点も含めています。
この場合は内力だけでも正しいつり合い力が出ますし、
MPC 力が打ち消し合うため、
MPC を含めても正しく 1.0 となります。-0.35*2 -0.16*2 + 0.011*2=-1.0
こちらも内力だけで正しい値を計算できるため、つり合い力の表示も正しい値となります。
最後のパターンがこちらです。
こちらは内力だけだと合力が 0.68 となり、正解の 1.0 に届きません。
MPC 力が 0.32 あるので、
内力と MPC 力を合計して、正しい値となります。
要素内力だけだと不足しているので、つり合い力の表示も 1.0 に届かない 0.68 となります。
パターン | MPC 力を入れるべきか |
1 | 入れてはいけない |
2 | どちらでもよい |
3 | 入れるべき |
残念ながら RBE2 を使うモデルでの完全な回避は難しいと思います。本記事の検証はモデル形状も単純であり、荷重条件も簡単な片持ちばりであるため、正しいつり合い力を知ったうえで、判定ができますが、実際の複雑な形状では、この3パターンに収まらない場合もおそらくあるのではないかと思いますし、複雑な荷重条件ですから、出てきた数値が正しいかどうかの判定もままならないと思います。
完全な回避策としては、やはり、RBE2 を CBUSH や CBAR などの 1次元の有限要素に置き換えてしまうことです。こちらは CBUSH に置き換えたモデルですが、完全に正しいせんだん力図を得ることができています。
こちらも RBE2 の時と似たような断面を作って、数値を追ってみます。
データのダウンロードはこちらです。cbush.7z 。こちらも .hm ファイルは HyperMesh 2024 用です。
要素内力の合計は (0.005*2 -0.347*2 - 0.314) = -1.0 で OK です。
こちらも -0.157*2-0.347*2+0.005*2 = -1.0 で OK です。
こちらも数字のキリが良いので、ちょうど -1.0 ということがすぐに分かります。
というわけで FBD によるつり合い力の算出のことだけを考えると、RBE2 (*1) を使わず、すべて有限要素にしてしまうのが、完全な回避策になると思います。
*1) MPC, RBE3 なども同様